オピニオン

2022年6月1日

人類滅亡の道をふさぐために

昭和61年6月、札幌市本龍寺を主会場に開催された日蓮宗青年会の第25回全国結集に参加した。故伊藤瑞叡上人の「願業」と題する深淵な基調講演を聴聞した後、札幌市内を唱題行脚し、北海道庁前で「北方四島早期返還」を祈念した。先日、知床半島で観光船沈没の惨事があり、多くの犠牲者とその家族のことを思うと、悲痛な思いを禁じ得ないが、報道で映像や地図を目にするたびに、北方四島がすぐ目と鼻の先であることを改めて思い知らされた。そして、ロシアのウクライナ侵攻と北方四島の帰属の行方が、密接に連関している事実に思いを致さざるを得ない。
尖閣諸島、竹島、北方四島といった日本が直面する領土問題のみならず、ウクライナ、台湾、南シナ海、カシミール、パレスチナなど、領土をめぐる争いは今現在も国際的に多くの難題を抱えている。
国際的な紛争解決のための組織として国際連合を信頼して委ねたいとの期待を持つのであるが、その国際連合の主要なメンバーの大国が、解決をリードするどころか自ら領土的野心を持って拒否権を乱用する現状には、一筋縄ではいかない困難を感じざるを得ない。
今回のウクライナ問題の背景には、宗教戦争的要素があると言われている。キリスト教とロシア正教は同じキリスト教を源流としているが、教義的に隔たりがあり、その違いが1千年以上にわたる宗教対立の原因となってきた。NATO(北大西洋条約機構)を構成する大多数の西欧諸国は、かつてのローマからカトリックを受け入れた国々を母体としており、一方、ロシアとウクライナは988年にコンスタンティノープル(現イスタンブール)からギリシャ正教を受容し、今のロシア正教の源流となっている。正教の中でも、ウクライナとロシアの間の確執があり、そのことが今回の紛争の底流に流れていると言われている。テレビ報道では、ロシア正教の聖職者が、犠牲者を悼むだけではなく、ロシアの侵攻を支持しているとされている。
このような複雑で困難な、しかし私たちのすぐそばに差し迫っている戦争と平和という課題に、どのように立ち向かえばいいのであろうか。
冒頭に紹介した全日青の北海道結集の基調講演で伊藤瑞叡上人は「いまこそ立正安国の精神によって、正によって邪を克服し、直道によって邪心を克服し、正教によって邪説を克服し、正なるものによって傍なるものを克服し、円なるものによって偏なるものを克服し、正道の侶として謗法の人を克服しなければならない。すなわち、正しい宗教(=人倫)によって、自律の倫理、自律の政治によって、正しい国家(=世界)を樹立していかなければならない」と述べていた。単に和すればいいというものではなく、そこに「立正」があって初めて真の平和がもたらされる。
現実から厭世逃避するのではなく、慢心過信に陥ることなく、困難な現実に臆することなく立ち向かい、仏の浄土をこの現実世界に築く困難な道を歩むことこそ、日蓮聖人の負託に応え、立正安国を実現していく道である。
今、世界全体が五濁の悪世に陥り、人類の存続が脅かされている。核戦争の危機に直面している。全人類が一体となって知恵を絞り、平和を取り戻すべき時である。敵も味方もなく、東も西もなく、全人類が絶滅の危急存亡から逃れる道、それこそが法華経、お題目の祈りである。
(論説委員・柴田寛彦)

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