オピニオン

2022年5月10日

今、人びととのつながりは

先月25日は日蓮聖人が佐渡で『観心本尊抄』を著述されて750年に当たりました。この書は私たちに最も大切な信仰のあり方を示された重要な著作です。この文末に伝教大師(最澄)のことばを引いて「日本にして末法の始め(略)闘争の時、今の自界叛逆・西海侵逼の二難を指すなり。この時、地涌千界出現して本門釈尊の脇士となり、一閻浮提第一の本尊この国に立つべし」、「この菩薩仏勅を蒙りて近く大地の下にあり」、「偏に四大菩薩出現せしむべき先兆なるか」とあります。
コロナ禍に加えてロシアのウクライナ侵攻に世界は今大きな岐路に立たされ、決断を迫られています。いうまでもなく世界規模の感染対策、戦争からの人命救助、それに伴う経済問題による格差や貧困など、人類に与えられた課題は山積しています。わが国でも政治の混乱、近隣諸国からの圧迫など、『観心本尊抄』に著された自界叛逆・西海侵逼の二難が目前にあります。
太平洋戦争終結時のソ連軍による北方領土侵攻、シベリア抑留、略奪と強制労働など、まだ直接の被害者も多数存命しています。その後の中国、韓国、北朝鮮の不当な領土侵犯、内政干渉もさらに拡大していくことでしょう。今、私たちは何をどうすればいいのか、不惜身命の心情で考え、実行していかなければならない時を迎えているのです。
750年前の国難の時、日蓮聖人は「法華経の行者」として、地涌の菩薩の引率者上行菩薩を強く意識され、加えて、このような末法の世であればこそ、釈尊から手渡された「南無妙法蓮華経」のお題目を人びとに伝え、安穏な世を創生するための行者たらんと自覚されたのです。
この春、九州国立博物館での「最澄と天台宗のすべて」を参観しました。聖徳太子から伝教大師に繋がる法華経信仰を最も大切にされたのが日蓮聖人ですが、この特別展の中ではほとんど日蓮聖人には触れていませんでした。聖人の紹介はせせらぎ程度のもので、ちょっと意外でもあり残念でした。
法華経の教えによる鎮護国家の仏法を確立して、日本を安泰に導こうという最澄の比叡山での晩年は、日蓮聖人にも大きな影響を与えたはずです。「国宝とは何物ぞ、宝とは道心なり、道心ある人を名付けて国宝となす」の最澄のことばを日蓮聖人は晩年の身延山での人材育成の支えにされたに違いありません。法華経信仰に繋がる修行者や信徒も秦氏から繋がる技能集団、流通経済に携わる人びとと共に比叡山、身延山、京都と歴史を紡いでいるのでしょう。
歴史は繰り返すといいます。いくら文明が進歩しようと人間の愚かさは変わりません。争いが繰り返される末法の世に日蓮聖人の予言による地涌の菩薩が出現し、世界が救済されることを強く望みますが、ただ座して待つだけでは実現しないことは明らかです。だからこそ、私たち日蓮宗徒が『観心本尊抄』の示す地涌の菩薩として目覚め、一大秘法の「南無妙法蓮華経」の経力を信じ、世界平和の顕現に向けての信行に努めるほかありません。
私たちには長い歴史と伝統で人びとを繋いできた教団やお寺という貴重な財産があります。そこでまず、これを基にした「人とのつながり」を大切にした活動をしなければなりません。そのためにも、人材「国宝」を家庭や社会で育てなければならないのです。そこに国家安泰、世界平和を希求する法華経の信仰と弘通の意義があります。それは公共の福祉や事業に寄与することでもあり、それが宗教の力で社会に貢献し、世界の安穏につながることになるのですから。  (論説委員・岩永泰賢)

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