オピニオン

2022年2月10日

馴れぬ齢を生きるには

「人はみな馴れぬ齢を生きている」(歌人・永田紅の短歌の上句)をこの正月からしみじみと噛みしめています。70を超え、体力、気力の衰えが身に染みてきたのです。コロナ禍でできないことを理由に委縮していく社会に抵抗しながら、法要、行事を過度に自粛せず、馴れぬ齢に鞭打って精進しています。先月は寒行で20数人の檀信徒と1週間、街頭を撃鼓唱題で行脚しました。批判覚悟で申し上げますが、感染のリスクより、修行の功徳を優先する信徒に素直に敬服しました。コロナや年齢を言い訳にせず、行学の二道に励む覚悟を再考させられた大寒でした。
昨年は伝教大師最澄の1200遠忌でしたので、12月に比叡山に登詣し、山内を巡拝しました。根本中堂や日蓮聖人修行の聖地で三十番神影現の横川には何度か参拝したことはありましたが、今回はその他の諸堂、特に伝教大師の御廟浄土院にお参りできました。12年の籠山行の仕上げはこの御廟で大師に給仕することだそうで、確かに修行中の凛とした空気が廟内に漲っていました。「蓮長」の名の時代の日蓮聖人も天台法華を学ぶため、この籠山行を勤められたのでしょうか。それにより、天台大師から続く伝教大師の法華経信仰を信受され、立教開宗へとつながっていったのでしょう。
あわせて、根来寺、高野山、長谷寺、琵琶湖畔の三井寺、日吉大社などにも立ち寄り、日蓮宗より400年以上も古い奈良平安仏教の奥深さに触れ、その佇まいの厳かさと優美さに感服しました。その上で日蓮聖人が法華経信仰の師と仰がれた最澄のことをもっとよく知らなければと、遅まきながら浅井圓道先生の『伝教大師』で学び直しました。最澄の出自は渡来人の秦氏で、誕生が比叡山の麓、近江でした。
昨年没後1400年の聖徳太子の事績を調べた折、太子の引き立てで活躍した秦河勝という渡来人の一族を知りました。その後の大和や奈良の朝廷を支え、桓武天皇の平安京遷都の経済基盤を担い、伝教大師の天台法華による鎮護国家という京都朝廷を中心とした天台宗が興隆していく背景にも秦氏の擁護がありました。またもや秦氏かと驚いた訳です。
平安京建設に当たり、秦氏は京都周辺に居住し、養蚕、機織、鍛冶、酒造など多数の渡来人の技能集団を擁していました。洛外で朝廷を支え、権力にはくみせず、日本文化と融合しながら、独自の宗教、文化を築いていきます。その活動拠点が京都の深草や太秦、近江であり、そこには秦氏の氏神で、伏見稲荷、松尾大社、日吉大社、石清水八幡宮があります。これらはみな日蓮聖人の法孫日像上人の京都開教の旗印である法華神道三十番神であり、京都町衆のほとんどが法華に入信し、その後の都を中心とした流通経済を司る法華宗徒の活躍は、室町から徳川初期の時代まで続くことになります。この日像上人の荼毘所、墓所は秦氏の拠点深草にあり、その後の壺日審上人、元政上人もなぜかこの地を終の棲家としています。またこの深草には秦氏の番神山古墳もあり、日蓮宗と三十番神と秦氏の深い縁を感じさせます。
NHK大河ドラマの「鎌倉殿の13人」は日蓮聖人ご生誕の50年前頃からの物語です。北条氏の歴史は、日蓮聖人を庇護した比企、平賀、千葉、伊東氏など反北条の一族との抗争であり、その一族と秦氏、渡来人、源氏との関係など興味深く鑑賞すれば、新しい日蓮聖人像が浮かぶかも知れません。
馴れぬ齢を生きることは満更でもありません。若い頃より新しい発見が続々と顕れるからです。
(論説委員・岩永泰賢)

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