オピニオン

2021年12月1日

尊き節目を迎えて

 数えの50歳を迎えられた日蓮聖人が、北条政権の裁断によって、佐渡流罪に処せられたのは、文永8年(1271)9月12日のことです。佐渡国の守護職は、北条宣時(大仏宣時とも。1238~1323)であり、その配下として佐和田郷などを支配する地頭職は、本間六郎左衛門重連でした。
 聖人居住の草庵を平左衛門の郎従などが襲い、聖人を拘束して、若宮小路などを引きまわし、由比ヶ浜、稲村ヶ崎などを経て、刑場の腰越龍ノ口で、密かに聖人の生命を奪うことを企図したのです。けれども、そのたくらみは、果たされることなく、地頭の本間氏の館がある相模国愛甲郡依智郷(現・神奈川県厚木市)へと移ることになります。そして、佐渡国へ出発されたのが、同年10月10日のことです。
 のちに、幕府が聖人の流罪の赦免状を発出するのは、文永11年(1274)2月のことでありますから、数えの4ヵ年間が聖人にとっての佐渡流罪期間です。
 幕府の下した厳しい罰は、聖人のみならず、弟子、信徒にまでおよぶのです。すなわち、その処断は、聖人が32歳の立教開宗以来、ただ末法の人びとを、題目の5字・7字による救いを示され、唱題一行による法華経信仰への帰依を勧奨されることに対する、弾圧にほかなりません。つまり、日本の政治を、「承久の変」(1221)を通して掌握した北条政権は、政治的・宗教的意図のもとに、日蓮聖人を中心とする法華経信仰の宗団の壊滅をはかることが佐渡流罪の目的でした。
 聖人の信徒に与えられたお手紙を拝見いたしますと、多くの人びとが、聖人のもとを去っていきました。さらに、聖人の法華経信仰のあり方、お題目を弘められる態度、あるいはその教えの内容に対する懐疑が噴出しました。
 日蓮聖人の流人としての居住は、本間氏の館の後方に広がる、死者を埋葬する場所に建てられたお堂にすぎません。しかし、そのような厳しい境遇の中、聖人は、つねに死に直面されていることから、「かたみ」(『昭和定本』590頁)として、また未来の私たち凡夫の指針となる長編の『開目抄』を、翌年の文永9年(1272)2月に完成されているのです。この書は9月12日の逮捕の折、殉死を覚悟した四条金吾へつかわされています。
 さらに翌文永10年(1273)4月25日には、末法の暗闇を取り除き、末法万年の大灯明となるべき『如来滅後五五百歳始観心本尊抄』(略して『観心本尊抄』)を完成されているのです。この書には、私たちが唱えるお題目は、久遠の釈尊の大慈大悲、すなわち久遠以来の釈尊のすべての功徳―一念三千の宝珠であることを示され、久遠の釈尊が、閻浮提の人びとにとっての本尊であることを明かされています。
 このように聖人の佐渡流罪の厳しさと、聖人の信仰の深さを考えるとき、末法のいまに生きる1人として、今年が聖人ご生誕800年のご正当であり、また聖人が佐渡流罪に処せられて750年の『開目抄』ご執筆のご正当、さらに明年が『観心本尊抄』完成の750年の節目に当たることの尊さを強く感じるのです。
 そして、私自身が愚者であることを認識するとともに、聖人が久遠の釈尊の勅命によって、本化上行大菩薩として、濁世末法の私たちのもとに涌現されたことの尊さに感謝と法悦とを感じないではいられないのです。  (論説委員・北川前肇)

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