2019年9月10日
アマゾンの熱帯雨林は世界の財産
アマゾンの熱帯雨林で火災が広がっている。予想以上な広がりにブラジルの大統領も消火に軍隊を派遣すると決断した。報道によると、火災は失火や自然発火ではないという。火災は、今年にはいってから約8ヵ月の間に7万5千件以上にも達し、1平方キロメートルにも及ぶ広さになってしまっているらしい。この広さは東京の面積の16倍に匹敵するほどだ。いかに広い範囲かがわかる。鎮火は容易ではない。
アマゾンの熱帯雨林は地球上の酸素の2割を生み出している(アマゾン協力条約機構)。それほど我々の生存に、いたって重要な関わりがあるところだ。フランスのマクロン大統領は「国際的危機である」と言ったという。過日のG7の会議にも重要な議題として上げられ議論されている。
アマゾンの熱帯雨林については、中学生の頃、地学クラブに所属していて、知識としてどんなに大切な存在かを教えられたのを憶えている。その広大な面積は550万平方㌔と日本の国土の約15倍もある。このアマゾンの熱帯雨林があるお陰で地球上に住む人間は生きることができるのだという。だから、このアマゾンの熱帯雨林は、国を越えて世界中の者が力を合わせて大切にして、守らねばならない、と担任の先生から教わった記憶がある。
地球は、太陽の惑星として生まれて以来、不思議な宇宙の、理解しがたい仕組みの中で、特異な星として存在し、そこに生物が進化しながら生存し今に至っている。大自然の中にあるあらゆる複合的な物によって我々も生きられるのだということを、実感として知ることができる。だから、アマゾンの熱帯雨林が火災のために急激な変化をして、草原化してしまうようなことになると、人間どころか、あらゆる生態系が狂ってきて、とんでもない事態が起こることになるにちがいない。
地球は宇宙の中のかけがえのないオアシスだと言われている。水があり、空気があり、周囲をオゾン層が覆い太陽からの赤外線を制御し、生物が生きられるような星になっている。地球は、太陽からほどよい距離に存在し、自転しながら公転して、自然環境が生物を発生させ進化させ、生存できるよう実にうまくできていて、今日のような地球を成り立たせているというわけである。それが、人間の仕業でせっかくの自然環境を破壊するようなことになれば、自分で自分の首を絞めるようなことにもなりかねない。
報道によると、アマゾンの熱帯雨林の火災の拡大は、為政者によるとんでもない政策が後押しして起こったことではないかという。アマゾンはブラジルをはじめ7ヵ国にまたがって存在するが、約6割はブラジルである。そのブラジルでは焼き畑(ケイマダ)を進めていて、国策として産業発展に利用すべきであるという考えから、伐採が加速され焼き畑が奨励されて、開発業者がどんどん入り込んで、この始末となっているとのことである。これは由々しき大事である。熱帯雨林が減少していけば、気候にも変動が起こり、人間どころか、植物や動物や魚類、鳥類までその生存に多大な影響が及ぶことは必定であろう。
世界の学者たちも、一斉にブラジルの為政者の考えを批判し、即刻変えるよう意見を述べている。アマゾンの熱帯雨林は、世界の貴重な財産であり生命の根源ともいうべき存在であることを、今一度しっかりと記憶に止めるべきであろう。
令和初彼岸ももうすぐ。彼岸とは、安穏な世の中をこの世に実現させることである。
(論説委員・石川浩徳)