2019年6月1日
温暖化? 寒冷化?
東京で日本一早く桜が満開を迎えたというのに寄住する寺がある静岡市では4月に入ってもまだ三部咲き程度だ。東北では太平洋側にまで積雪があったという。いわゆる異常気象というのだろうか。
しかし地球は温暖化に向かっているのではなかったか。それを防止するために世界会議を何回も開き、二酸化炭素(CO2)の排出量に規制までかけていたはずだ。どういうことなのだろう。
実は、地球の温暖化は事実らしいのだが、その原因についてはまだはっきりしていないのだそうだ。たしかにCO2の量も増えていて大気温もそれに歩調を合わせるように変化しているのだが、そのどちらが原因であるかで意見が分かれているらしい。CO2が増加したから大気温が上がったという説と、大気温が高くなったので岩石や海水に含まれていたCO2が大量に気化したという説である。
いずれが原因であるにせよ、大気温の上昇は地球環境に大きな影響を与え、いずれは生物が住めなくなるほど海水面が上昇するなどといわれると、なんとか阻止しなければならないと考えるのは当然だろう。
ところが、恐竜が生息していた1億5千万年前から6千500万年前までの地球の平均気温は現在より6度も高く、CO2の量は6倍から10倍だったと養老孟司氏がその著書で発表している。炭酸同化作用に必要なCO2が多いということは、酸素の量も多かったということであり、その上気温が高いとなれば植物の発育にとって最良の環境であった。だから草木が生い茂り、草食竜が成長し、それを食べる肉食竜も巨大化した。石油も石炭も使わなかった時代に、自然に発生したCO2が地球上に充満していたことも驚きだ。南極の氷が完全に溶けたという歴史上の記録もないからCO2による悪影響はさほどではなかったことになる。
その恐竜が滅びたのは何らかの原因による地球の寒冷化だった。今、地球は寒冷化に向かっていると説く科学者が増えている。それは太陽の活動が鈍ってきたからだそうだ。黒点数が減少している事実も指摘されてきた。黒点数は11年周期で増減を繰り返しているのだが、最近は最大期になってもそれほど増えていない。恐竜が滅びたほどではないにせよ寒冷期が迫っているとなれば大変なことだ。
農作物の不作が続き、水源の凍結により飲料水の確保が困難になる。寒い地方では港が凍り、船が使えなくなる。燃料費が高騰して貧しい国ではガソリンが買えなくなる。温暖化を問題視していたことを後悔するときが来るのかもしれない。
いずれにしても地球の気候変動は、宇宙規模の出来事で、46億年の地球の歴史の中では何回も繰り返されてきたのだろう。
地球は1人で宇宙に浮かんでいるのではない。それは太陽系を形作り、銀河系の一部をなし、宇宙の一員でもある。地球上での出来事は宇宙の出来事そのものだ。その宇宙即ち、三千世界が我々の一念にあるというのだから、個々がその意識を持って生きることこそが地球のいや、宇宙の未来を救う事になるのではないか。ここでも祈るだけではない実践が問われている。
(論説委員・伊藤佳通)
