2018年3月1日
安心できるお寺・僧侶とは
お寺が社会から「良いお寺」と信頼を得るには何が必要か。一般社団法人「お寺の未来」が「安心のお寺10ヶ条」をまとめた。
第1は寺として一般社会に向け確固たる宗教的理念・方針が示されているかである。寺報・パンフレット・ホームページなどで宗教的使命感と具体的方針が情報発信されているか。第2は僧侶や寺族の人柄である。日常の勤行や法服姿で寺院生活に宗教者として信仰・品格が保たれているか。僧侶がどのレベルで宗教的・文化的研鑽を修得しているか、つまり出家者としての資質が問われる。第3はまごころの弔いがなされているかである。相手の立場に立った心のこもった葬儀や法事がなされているか。遺族へのグリーフ・ケア(死別の苦しみへの援助)や傾聴がなされているか。宗教的癒しが判断される。第4は充実したエンディングサポートである。檀信徒のために終活や人生相談を受けているか。エンディングに関わる専門家や行政書士・税理士など仕業と連携できているかである。
第5は寺院が仏教の智慧に触れる祈り・体験の場として活かされているかである。祈願・写経・法話などで広く社会に寺門を開放しているか。縁日にちなんだ伝統的行事が、参詣者のニーズに応え工夫されているかなどである。第6は寺院が地域社会のコミュニティーとして活動しているかである。例えば初詣・七五三・節分会・てらこや・地域NPOとの連携。つまり年齢・性別・社会的立場を超えて人々が集うお寺コミュニティーとしての活動である。第7は寺院の社会活動である。檀信徒や地域社会を巻き込んでいかに奉仕活動・ボランティア活動・チャリティー活動しているかである。第8は施設・設備の充実である。本堂及諸堂が礼拝施設として荘厳され、庭園や墓地など境内が信仰の法城として整備されているか。文化財保護、災害対策、バリアフリー対応などの整備である。第9は財務の安定性である。会計処理が適切になされ、金銭的に公私が明確化されているか。会計帳簿、源泉税、年間収支計算書の適正処理が重要だ。第10は宗教法人として堅実な管理運営がなされているかである。寺院規則が保管され、宗内をはじめとする都道府県庁への提出書類は適切に作成・処理されているか。檀信徒のプライバシー保護や情報管理が適切かなどである。
近年、人口減少と過疎化による檀信徒の減少化、直葬などによる葬儀式の簡素化など寺院を取り巻く社会環境は激変している。特に僧侶や寺族に向けられる視線も厳しい。「安心のお寺10ヶ条」は一般生活者の目線でまとめられたものであり、社会から安心できるお寺・僧侶と評価される一つの目安となろう。
現在、日蓮宗では常不軽菩薩の「但行礼拝」を基本精神に宗門運動「立正安国・お題目結縁運動」を展開している。その重要課題の一つが未信徒とのお題目結縁である。常不軽菩薩はお題目による成仏を確信し、あらゆる人に向かい合掌礼拝した。それは「亦復故に往く」つまり「何度も繰り返し自分から行く」能動的行動だった。現代は「宗教離れではなく宗教者離れが問題」と指摘されている。導師として衆生を教化する僧侶を「能化」と呼ぶ。日蓮宗僧侶の1人ひとりが能化として常不軽菩薩を追随することが宗門運動成功には必要となる。そのためには出家者としての功徳を積み品格を高め、社会から信頼される僧侶の姿が求められる。「僧侶の常識は、社会の非常識」とならないよう共に精進したいものである。
(論説委員・奥田正叡)