2017年4月10日
子どもが陥りやすいネット依存症
高校・大学の合格発表後、新入生の誰かがネットのコミュニケーションツールで友だちを募ると、何十人もが登録をし、入学式前には友だち関係ができあがるという。ネット社会の今、人びとのコミュニケーションが大きく変化を遂げている。以前は音声と表情、身振りで意思を伝えたが、最近ではスマートフォン(スマホ)の画面を指で撫でたり押すことでコミュニケーションをとるようになった。
山手線の乗客の様子を見ていいると立っている者も、座っている者も、皆一様にうつむき、スマホを操作している。スマホの浸透は、電車の中だけでなく、家庭生活をも大きく変えようとしている。外出時でもスマホで自宅のエアコンのスイッチを入れたり、遠くに住む孫の動画も見られる。1人暮らしのお年寄りのいる家族では、「安否アプリ」を使えば、定時に連絡をとることができ、異常事態のときには家族に緊急メールが送られる。またネットショップで衣類・電気器具・本・食材何でも買えるし、銀行取引・イベントチケットの入手、各種予約、店探し、道案内、調べものなど利便性をあげたらきりがない。しかし、このスマホが大きな問題を惹起しているのである。
最近新聞を読まないで、スマホやタブレットでニュースを読む人が多くなっている。これらの人びとは、ほとんど自分に興味のある、限られた分野の情報だけを見ている。テレビや新聞は、発信するニュースの多様性にその特色がある。自分の知らない、興味のない分野の情報にも目がいくことも多い。ネットの記事では、自分の好みの情報にだけしかアクセスしない傾向になる。ネットのニュースの並ぶ順番は、アクセス数の多い順であるから、人びとの興味をひくショッキングなもの、面白いものが上位にくることになる。そのため芸能やスポーツの情報ばかり見ている人が多く、政治や国際関係、社会正義などの重要問題が隅に追いやられてしまっている。さらにネットの情報には、発信源が不確かなものが紛れ込む可能性がある。そのデマがあっという間に広がって世界を動かす可能性もあり得る。
もっと恐ろしいのは 「NPO法人こどもとメディア」の報告によると、最近日本の子どもの多くは、心身発達不全に陥り始めているということだ。それにはスマホ、テレビなど電子映像メディアが関わっているという。日本小児科学会も、同様の警鐘を鳴らしている。乳幼児でも、1日4時間以上、休日1日8時間以上メディア漬けになっている子どもが、半数に及び、メディアやネット依存症の子どもも増えているという。友だちや家人と接する時間が減り、メディアの世界に没入する。あまり話さなくなり、部屋に閉じこもる。家族といてもスマホを離さない。他人と話すことも避けるようになる。さらに悪化すると、メディア機器を禁止されると激怒するようになる。自由な時間はほとんどメディア機器漬けとなり、そのうち体調不良・睡眠不足などを訴える。疲れやすくなり、体力の低下、感覚の鈍化、手足の震えが起こる。さらには自律神経失調症の症状を示すようになる。
日蓮聖人は、子どもの頃虚空蔵菩薩の前で「日本第一の智者となし給へ」と願われた。そして、受け身でなく、能動的に勉学し続けて、法華経の神髄を掴み、人と対して人を説得する人生態度をとられた。この生き方を、若者は学ばなければいけない。 (論説委員・丸茂湛祥)
