オピニオン

2015年10月1日

過疎地域寺院活性化講習会

7月末、伝道部主催の「過疎地域寺院活性化講習会」が岩手県を会場に開催された。長崎、島根、石川に続く4回目の開催である。
人口減少、少子高齢化の進む地域での寺院護持の問題は、近年益々深刻度を増し、将来宗門全体の屋台骨を揺るがしかねない大きな問題である。
この問題には、2つの視点がある。1つは、なぜ人口が減少し、少子高齢化が進み、それが社会にどのような影響を及ぼすのかについて、一般社会的な分析ではなく、正法の立場から分析し、回答を導くことである。
2つ目の視点は、現に生じている人口減少、過疎化、少子高齢化の現実の中で、いかにすれば正法の牙城である寺院を護持し、檀信徒の教化をたゆまず進めて行けるか、その方策を探ることである。
今回の講習会は、主としてこの第2の視点から、現状を見直し、新たな視点から方策を探ろうとするものであったが、その正当性を担保する基礎として、第1の視点が欠かせないことは勿論である。
講習会は、超宗派仏教徒によるインターネット寺院「彼岸寺」を設立したり、「未来の住職塾」を開講するなど、お寺から日本を元気にするための活動を精力的に展開している松本紹圭師を講師に、講義とワークショップを交えた1泊2日の濃密な内容の講習会であった。
日蓮宗の僧侶だけではなく、寺庭婦人、檀信徒が同じグループで、同じテーブルを囲んでじっくりと話し合うという、画期的なものであった。
松本師は、予め描かれた「あるべき寺院の姿」と現実とのギャップをいかに埋めていくかを検討する、従来型のギャップ・アプローチではなく、今ある価値や強みを見直して、それをいかに活かしていくかを考えるポジテイブ・アプローチの発想が大切であることを示唆し、現在のそれぞれの寺院の特質を再評価する、「無形の価値の棚卸し」をグループワークの課題とした。もちろん高齢化、人口減少の進む地域の現状といった外部環境の変化は厳然として存在するのであるが、それに対応するためには、自らの価値の再発見が必要だということである。
松本氏は、300以上の寺院の様々な角度からの調査結果から、次の3点が、人々が信頼し安心できる寺院の重要な基礎的条件であると指摘した。3点とはすなわち、①住職寺族の信頼できる人柄がすべての基盤であること、②「心のよりどころ」と「先祖供養」のバランスが取れていること、③境内の手入れが行き届いて整備されていること、である。
ワークショップでは、寺院僧侶、寺庭婦人、檀信徒、それぞれの視点から、お寺の使命とは何かを改めて話し合い、お寺をとりまく外的環境の変化を分析し、お寺の持つ無形の価値を再評価した上で、今後のお寺のあり方のビジョンを描く作業へと進んだ。そして、それらを各自一枚のワークシートに書き込み、レポートとした。
さて、最後の最も重要な課題は、それを単なる絵に描いた餅にすることなく、いかに実現するかということである。
実は、後日、今回の講習会の参加者が再度集まって、その後の経過を報告し合うことになっている。その時に初めて、講習会が意義あるものであったのか、主催者、講師、受講者それぞれが評価されることになる。
過疎地域寺院活性化の課題は、問題を意識した僧侶、寺族、檀信徒自らが責任を持って取り組まなければならない課題である。誰かが何かをしてくれるのを待っていては、決して解決しない。
(論説委員・柴田寛彦)

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