2015年9月1日
戦後70年の立正安国・お題目結縁運動
文明とは相互に敬うこと
お題目の篤信者・菅沼公次さんが、今年の6月に91歳で亡くなった。
菅沼さんは5人兄弟の四男であった。戦時中、兄弟は20歳前後であったため、5人とも第二次世界大戦に徴兵された。
長兄は29歳で、次の兄は26歳で、3番目の兄は24歳で戦死し、3人の兄たちを失った。特攻隊に志願した弟と復員したが、兄たちや戦友、多くの知人を失った菅沼さんは、戦争で犠牲になった方々を供養して、ひたすら世界平和を祈る生涯を送った。
平成6年は終戦50回忌の年であった。菅沼さんは兄たちや戦没者の50回忌供養のために、日向山平和公園に藤井日達上人の「諫言碑」を建立した。
「文明とは電灯のつくことでもない/飛行機のあることでもない/原子爆弾を製造することでもない/文明とは人を殺さぬことであり/物を壊さぬことであり/相互に親しむことであり/相互に敬うことである」
この諫言は、藤井上人が昭和25年、「平和国家建設の方針」に書かれたものである。
悲惨な戦争によって多くの尊い人命を亡くした日本が、戦後平和国家として世界に貢献していくには、法華経の相互礼拝の実践しかないというこの真理は、世界人類恒久平和のための規範である。
この諫言碑を建立した菅沼さんは、それ以来毎朝の勤行の時には、戦死した兄たちや戦友の名前を読み上げて供養した後、必ずこの諫言を読んでお題目を唱え続けた。
戦没者の供養と平和の祈りに生きた菅沼さんは、よき伴侶に恵まれ、孝心の子女を授かり、幸せな人生をまっとうした。平和を祈る功徳であったと思う。
戦後70年に生きる私たちは、今日の平和の礎になった戦没者の心を深く受け止めて、立正安国・お題目結縁運動に一心に精進していこう。
一切衆生の同一の苦
8月6日の広島原爆忌の日の朝日新聞文化文芸欄に、朝日俳壇・歌壇の2選者の対談が載っていた。
その選者の話によると、最近の時代の影響か、自然を詠むことの多い俳句にも、安保法制がらみの作品が多くなってきたということであった。
70億の二人と思ふ夜長かな
そこには千葉新一さんという方のこの句が挙げられていた。
夫婦は70億人という地球人類のなかのたった二人だけれども、この今の世の中のことを心配して、夜長に語り合っている情景が目に浮かぶようである。
「二度と戦争はしまい」と誓って平和憲法を遵守し、平和国家日本の構築に努力して70年、安保法制がらみで再び戦争に巻き込まれはしないかという危惧が、日本の国の人びとのなかに持たれてきている。
「戦争はしない」という誓いのなかには「戦争はするな」という行動が伴うはずである。世界の何処に起きる戦争でも、人類70億の地球上で起きる戦争である。我がことの如く受け止めて、戦争はするな武器は捨てろと行動して、平和への努力をするのが日本の使命ではないか。
日蓮聖人は『諫曉八幡抄』で「一切衆生の同一の苦は悉く是れ日蓮一人の苦」と仰せになっている。「同一の苦」とは戦争による人類の地獄の苦しみと受け取ってもいい。それを聖人自身の苦しみとして、戦争のない立正安国のお題目を唱えて生きるというのだ。
お題目を信奉する私たちは、この日蓮聖人の心とひとつになって、立正安国・立正世界平和のお題目の信仰を弘めていこう。
(論説委員・功刀貞如)
