オピニオン

2015年8月10日

平和を「つくる」

現在、日本では集団的自衛権を認めるか否かについて、議論が続いています。「賛成」「反対」そして「よくわからない」など意見が入り乱れ、この議論での問題点がわかりにくくなっています。反対の人達からは「日本人が戦争に巻き込まれるかもしれない。他人の戦争に手を貸すのか。そのようなことはすべきではない。」という意見が聞かれます。至極当然な考えであり、議論を進めている政治家はこの意見に応えなければなりません。しかしまた、賛成の人達からは「自分だけ守ってもらえればいいのか。日本の周りの世界で戦争の犠牲になっている人を見殺しにするのか。そのようなことはすべきではない。」と意見が返ってきます。これも傾聴すべき考えです。両者の意見を聞いてわかるのは、賛成の人も、反対の人も、どちらも平和を考えた意見を持っているということです。おそらく、日本では「戦争はすべきでない」と思っている人が大半ではないでしょうか。それにもかかわらず、何故このような議論の対立が生まれるのでしょう。
議論を単純化する謗りを受ける覚悟で、現在の集団的自衛権の議論を俯瞰してみますと、反対の人達は、集団的自衛権によって、日本人が直接戦争に係わって生命の危険に遭う可能性があることを問題視していますが、どうやって日本と日本人を守るかについて具体的な説明がなされていません。一方、賛成の人達は、集団的自衛権は日本と日本人を守るものだと主張しますが、他の国での活動にどのような制限を設けるのか、活動に携わる日本人の安全をどのように確保するのかについての説明が不明確です。
この対立の中で見えるのは、お互いが相手の主張の負の部分、足りない部分を批判している点です。そこで、この対立の見方を変え、双方の人達が「自分の足りない部分を考える機会をもらっている。」として相手の話を聞く耳を持つようになれば、議論が建設的に進み、反対・賛成双方の人達が持っている望みである「平和を護る」ことに繋がるのではないでしょうか。
今年平成27年は、昭和20年の太平洋戦争の終戦から70年の節目の年にあたります。各地で戦没者のための慰霊行事が行われています。慰霊の祈りは、立正安国・世界平和です。私たちは、世界中の人達が平和になることが、先の大戦で犠牲になった人達の霊を癒すことに繋がると信じ、読経を続けています。そこでいつも自問することは「平和は誰が護るものなのか。」「平和を護るために、自分は何ができるのか。」です。私たちが願う平和は、世界中すべての人の平和です。しかし、利害が対立する世界では、すべての人が平等に平和を享受することが難しいのが現実です。そこに誰が平和を享受するかを巡って、解釈の違いが生まれ、対立が起こります。私たち信仰を持つ者は、この厳しい現実にどのように応えればよいのでしょうか。
宗門は今、常不軽菩薩の但行礼拝の合掌を社会に広めようとしています。相手の仏性を信じ、その人が菩薩の心を顕してくれることを願う合掌です。対立の中に入って、政治的な争いに巻き込まれず、合掌して、すべての人達の心を鎮め、実りのある話をする環境をつくる。これが私たち法華経を信ずる仏教者が、平和をつくるために今できることではないでしょうか。
(論説委員・松井大英)

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