2015年3月1日
横綱の品格
横綱「白鵬」が「角界の父」と慕う昭和の大横綱、32回の優勝記録を持つ「大鵬」。その一字をいただいた白鵬は15歳でモンゴルのウランバートルから日本に来たときの体重は60㌔そこそこ。お父さんはメキシコ五輪レスリングの銀メダリストで、モンゴル相撲の元横綱。平成13年3月初土俵、18年5月大関で初優勝、19年5月に69代横綱昇進。そして今年の初場所で33度目の優勝を飾り、優勝歴代最多記録を樹立した。
その間、22年の野球賭博事件。23年の八百長相撲の不祥事件、大相撲の大ピンチ時代を横綱になって7年以上、一回の休場もなく、一人横綱の時期も含め、新聞評のごとく、「大相撲史に名を刻む偉業」をなしとげた。22歳2ヵ月の若さで横綱になったが、今まだ29歳、身長192㌢、体重160㌔、しなやかで、やわらかい筋肉を作り上げた身体。今後まだまだ優勝回数をのばし、大相撲のもりあがりに貢献することは間違いない。
審判に物言い
初場所千秋楽から一夜明けた26日、東京都墨田区の宮城野部屋で予定より1時間大遅刻してきて記者会見。13日目の稀勢の里戦について、土俵際で両者がもつれて物言いがつき、5人の審判団は「同体」と判定し取り直しとなった相撲について横綱は、「疑惑の相撲がある」と切り出し、「ビデオを見たが、子どもが見ても(自分が勝ちと)分かる相撲。なぜ、取り直しにしたのか。もう少し、緊張感を持ってやってもらいたい」と裁定に異を唱え、さらに「本当に悲しい思いだった。肌の色は関係ない。まげを結って土俵に上がれば、日本の魂なんです。みんな同じ人間」と厳しい表情で語った。
この発言について北の湖理事長は「審判はいろいろな角度から見て判断した。横綱なんだから〝もう一丁こい〟という気持ちでやってもらいたい」と不快感を示し、宮城野親方(元幕内竹葉山)を注意する意向を明らかにした。
26日夕の横綱審議委員会でも白鵬関の発言に意見が出た。内山斉委員長は「審判はスポーツの世界では 厳正なもの。それを批判するのは自分の未熟さをさらけだすと言っていい。反省すべきは横綱本人」と話し、「岡本昭委員は「いかにも誤審のように言っているが、大横綱がそういうことを言うのはいかがなものか」とその発言を批判した。
大鵬ならしない
審判部の勝負判定を批判した横綱白鵬はその後、無言を貫いた。師匠の宮城野親方は北の湖理事長に呼ばれ、横綱の言動について「力士の監督は師匠。責任を持ってやってもらいたい」と厳重に注意された。そのなかで元横綱大鵬の故納谷幸喜氏の芳子夫人(67)の白鵬発言についての言葉がとくに印象に残った。
「白鵬の審判批判を聞いたときは『なんでそんなことを言っちゃったんだろう…』と思って、夫の大鵬の連勝が誤審によって「45」で止まったとき、帰ってきた大鵬に「『お疲れさま、絶対勝ってたのに…』と言ったら『そうなんだよ』とは言いませんでした。『そういう風に見られる相撲を取ったのが悪いんだ』と言ってました。逆に私たちが励まされました」。
仏教に「身口意の三業」という(「こころ」と「ことば」と「ふるまい」の三つの行動)を大切にという教えがある。白鵬の今後の精進に大いに期待したい。(論説委員・星光喩)
