オピニオン

2015年2月1日

日本海中部地震33回忌

近年の繰り返される大災害に紛れて記憶が薄れつつあるが、本年は阪神淡路大震災からちょうど20年である。また、昭和58年5月26日の日本海中部地震から32年、被災地では犠牲者の33回忌法要が営まれる。地震の規模はマグニチュード7・7、震度は5以上であった。東日本大震災と同様、地震による死者(4人)よりも、最大15㍍の津波による死者が多く、100人(港湾工事作業員35人、男鹿の海岸に遠足中の小学生13人等)に上った。
能代市の墓地公園には、元禄7年(1694)の大地震(死者300人)、宝永元年(1704)の大地震(死者58人)、天明・天保年間の冷害に伴う大飢饉による餓死疫病死者の供養塔があるが、地震や津波のみならず、風水害や冷害などの天災による死者の数は今の時代からは想像を絶するものであった。
天保の飢饉は、江戸時代後期最大の冷害であった。「田植えの前後から日照り続きで旱魃(かんばつ)になり、6月には一転して大洪水、出穂が遅れて稲虫が大量発生、8月に入って天候はやや持ち直したが、9月4日には大霜がおり、10月には荒天が続いて稲刈りに支障を来たし、11月はじめには大吹雪で根雪になる」といったまれに見る天候不順のため、収穫が皆無であった。食べ物を失った人びとは、野山に代用食を求めたがそれも限界、翌年には餓死者が続出した。疫病が蔓延し、そのために亡くなった人も多数であった。
史書に「秋田藩の人口はおよそ40万人で、そのうち死者が10万人出た」とされているが、人口の約4分の1が餓死したことになる。「ある村の女性が知人を訪ねる途中で力尽きて餓死してしまった。2歳になる子どもが、母が死んだのも知らずに乳をもてあそんでいたが、次第に肌が冷たくなるに及んではじめて母の異変に気付き、驚き泣き、顔をなで、髪をかいたりしたが再び動くことなく、ついにこの子も乳を口に含んだまま息絶えた」とある。
多数の死者を出すような天災の時には、どこの家でもねんごろに弔う余裕はなく、大きな穴を掘って次々とその中に埋めたという。能代の墓地公園には、天明飢饉餓死者7回忌の供養塔や、天保の飢饉の50回忌、天明の飢饉の100回忌の供養塔がある。これらの石塔を拝すると、飽食の時代に生きる私たちに、先人の苦しみの歴史を忘れるなと語りかけているように思う。
天保の飢饉は、日本全体に及ぶもので、前後して浅間山の大噴火があり、凶作にともなう米価の急騰、それによって引き起こされた一揆や打ちこわしなど、日本の社会を大きく揺さぶるものであった。天災・人災・疫病など、社会の混乱のみなもとは国政の過失にあり、為政者の過失が自然現象の混乱を招き、不作や流行病を招くのだとする考えは今も昔も同じである。老中田沼意次が失脚し、松平定信が新しい老中として寛政の改革に乗り出したのも、この天明の飢饉の政治的な責任問題が背景にあるといわれている。
食糧やエネルギー源の備蓄、災害時の速やかな対応などによって人災を最小限に留め、人々の安全な生活を守ることは、政治の最重要課題であるが、最も大切なことは、自らの心の備えである。
自然現象が人間の営みの結果であるか否かについては深い洞察が必要であるが、それによる人間社会の混乱には、人間の営為が深くかかわっていることが明らかである。いざというときのために正しく備えることが大切である。そして、精神的な備えの肝要は、題目受持による心の鍛錬に他ならない。
(論説委員・柴田寛彦)

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