論説

2020年7月20日号

新しい生活様式

 新型コロナウイルスの累計感染者は世界全体で1166万人に達した(7月8日現在WHO統計)。感染者は4月初めに100万人、5月中旬には500万人と急増した。国別では米国がトップの300万人。次いでブラジル171万人、インド74万人、ロシア70万人と続く。今後も米大陸やインドなどで感染拡大が懸念される。
 国内での感染者は2万人を超え、死亡は980人(7月9日現在)。緊急事態宣言解除後も東京を中心に新規感染者が増え感染の第2波が心配される。今後は地域・職種を絞りピンポイントの感染対策が必要という。
 6月下旬わが家にもいわゆる「アベノマスク」が届いた。「新しい生活様式の実践をお願いします」とパンフレットが同封されていた。ウイルス対策として個々の基本的感染対策や日常生活での基本的生活様式が書かれていた。今後は「3密」(密閉・密集・密接)の回避や手洗いの励行、ソーシャルディスタンスなど新しい生活様式は欠かせない。
 他方、社会ではさまざまな問題が生じている。一律10万円給付金や持続化給付金の遅延。スタッフ不足による混乱する介護現場。大学生の2割が退学を考えているが、支援金給付は1割の学生のみ。保育所・幼稚園の休園による保護者の負担増大。長期休校による学校教育格差などだ。社会保障や教育への公的支援の脆弱さが一気に浮き彫りになった。
今、求められている緊急課題とは、1人ひとりの新しい生活様式の実践はもちろん、政府による迅速な対応と長期的補償、つまり「公と私」の両面から考えることが必要と感じる。
 新たに発足したコロナ新分科会は、感染は拡大傾向だが重症者は少ない。医療体制に余裕があり今後は感染の拡大防止と経済活動の両立が課題と指摘。感染防止は大事だが、長期間になるほど経済活動が重視される。そこで経済の語源を調べると「経世済民」とある。経には「たていと」を原義として十数種類の意味があり、その中に「おさめる、統治する」の意味がある。経世済民とは「世の中を経め民の苦しみを救う」こと、そうした政治を意味する。一般に経済活動とは「支出(需要)・生産(供給)・収入(所得)の循環」いわゆる「物と金」重視で理解されるが、「世を治め国民の苦しみを救済することが目的」という本来の意味を見失わない経済活動の展開を願いたい。
 不要不急の外出を避け自坊に閉じこもって生活した数ヶ月間。境内の掃除などしながらいろいろ考える時間や趣味の茶道に没頭する時間が持てた。コロナ禍の中、裏千家千宗室家元が「各服点」を紹介した。各服点は法華信仰の篤かった裏千家13代家元円能斎が明治後期に、地方の公会堂で公表したのが始めとする。当時の衛生思想の普及に対応するために考案された点前だ。普通の濃茶席では、客同士が一碗で濃茶を飲み回すが、各服点では亭主が客1人ずつ個々の茶碗で濃茶を練って出す。つまり主茶碗は正客にのみ、連客には盆に載せた銘々の茶碗に濃茶を練って出す。衛生面重視の点前と言える。
 ところで京都では6月に水無月を食べる習慣がある。水無月はういろう生地の上に邪気払いを意味する小豆を甘く煮てのせ、三角形に切った菓子のこと。室町時代、宮中では氷を食べて暑気払いする風習「夏越の祓」があり、その氷に模して作られたのが三角形の水無月だ。今年も前半が過ぎ無病息災を感謝し、厄除け祈願を込めて水無月を頂いた。もちろんコロナウイルスの退散も祈った。茶道に限らず日本の伝統文化には、新しい生活様式を考えるヒントがあると思う。皆さんもぜひ探してはどうでしょうか。
(論説委員・奥田正叡)

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2020年7月1日号

新しい世相をつくるのは私たち

 5月20日、天皇・皇后両陛下は、新型コロナウイルス感染症の治療に当たる医療現場の状況などについて、日本赤十字社から説明を受けられた。説明に先立ち天皇陛下は、「お疲れもいかばかりかと案じていますし、心ない偏見に遭う方もおられると聞き心配しています」と述べ、同社名誉総裁の皇后さまも医療従事者へのねぎらいの言葉を伝えられた。両陛下が、コロナ関連で専門家からの話をお聞きになるのは、4回目である。
 他方、コロナウイルスによる死者が10万人に迫る米国のニューヨーク・タイムズ紙は、5月24日に一面を死者の名前や享年、一言紹介だけで埋め尽くし4ページにわたって掲載した。「数字慣れ」を起こしてしまうと、計り知れない喪失は実感できないと記している。
 小稿執筆中に緊急事態宣言が解除された。社会は新しい生活様式への移行と経済活動の再開を図り動き出したが、そこには種々の制限と共に、依然として感染への恐れとこれに伴う偏見や差別あるいは格差が存在し続けていた。
 酒井義一氏(ハンセン病首都圏市民の会事務局長・真宗大谷派存明寺住職)は、5月14日の仏教タイムス紙で、「歴史も状況も違いはありますが、差別や偏見が生じる構図は、ハンセン病も新型コロナも同根だと感じています」と述べ、3つの共通パターンを挙げている。
①【よく分からない】無知。ハンセン病もそうであったように、新型コロナウイルスについて、すべてが解明されておらず、はっきりしない情報の中で、勝手に負のイメージを拡大してしまう。
②【恐れる】人間は恐れを感じると自己防衛本能が働く。しかし、自分の身を守る思いは時に暴発する。そして差別が起こる。排除すべきは菌であるのに、必要以上に人間を排除しようとしてしまう。
③【ひとくくりにする】「ハンセン病患者」「コロナウイルスの感染者」というように、ひとくくりに捉える。人権上、感染者は数字で発表されるが、その向こうには名前を持った一人ひとりの人間がいる。ひとくくりにすることによって、苦しみや辛さを抱える人間を見えなくしてしまう。
 つづけて酒井師は、私たちに必要なのは、ウイルスに対する正しい認識や理解だけでなく、「自らの中にある様々な課題や闇に気づいていくこと、そして相手を人間として見つめるまなこを持つことが大切」と語る。
 日蓮聖人は『観心本尊抄』の中で「不軽菩薩は所見の人において仏身を見る」と記され、今日の私どももまた宗祖に学び、他者に仏の姿を見て互いの「いのち」を軽んじることなく深く敬う菩薩行の実践=「いのちに合掌」を生き方の基としている。ならば今こそ自他の環境・生活・経済などの条件いかんに拘らず、ことさらに深く敬う姿を体現すべき時ではあるまいか。
 新型コロナウイルス禍では、当たり前の日常では見えなかった人間の闇があらわとなり社会全体が病んだ。その様相は、衆生の善心を害する「貪り」「怒り」「無知」の三毒に蝕まれ、互いが苦しみの海に浮沈しているようである。
 今後、多くの分野で行動様式や意識が変容し始め、新たな価値観を生み時代が形づくられていくことだろう。寄り添い、支え合いの形が多様であるように変化の時代に「いのちに合掌」の体現は千差万別あって善い。  
 私の行う小さな菩薩行が、それぞれの場と人を得て灯されるとき、衆生の闇を照らすに違いない。世相をつくるのは私という存在の集合体である。
(論説委員・村井惇匡)

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今年の1月13日の御年頭会の日も晴天にめぐまれました。

日蓮聖人の新年初の月命日はいつも晴れます。

みなさま今年もお元気でがんばっていきましょう!

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