オピニオン

2019年9月1日

夏から秋へつなぐ

 「スマイル・シンデレラ」という可愛いことばと爽やかな笑顔が、猛暑と台風に恐々としていた8月初旬イギリスから届きました。弱冠20歳の渋野日向子プロが初めての海外遠征で、女子ゴルフのメジャー、全英女子オープンを笑顔と共に日本人として初めて制したのです。ゴルフ界にとってはものすごい快挙であり、しのぎを削る厳しい競技の中の笑顔が世界中のゴルフファンを魅了したのです。ことばは違っても笑顔は世界共通であることを証明しました。
 広島と長崎の原爆記念日の合間には小泉進次郎衆議院議員と滝川クリステルさんの結婚会見がまた日本中を湧かせ、おもてなしカップルの幸せいっぱいの笑顔は日本中の人たちを和ませました。
 勝者や結婚の一瞬の喜びにも、その影にある永年の家族や周囲やその関係の人びとの努力や協力があったことを忘れてはなりません。先人たちが何とか後世の人びとが幸せであってほしいと願い、
 精進してきたからこそ、それぞれの幸福が実現に近づいていくのです。私たちは自身の幸せはもちろん、社会や人類総ての人々が幸せになってほしいと思えばこそ、学問や仕事や信仰に励んでいるのではないのでしょうか。
 毎年、酷暑の8月には戦争と平和について考え、この幸せをつないで行くことこそが、今を生きる我々の使命と責任であるという事を誰もが思っているでしょう。しかし、一方では、戦争や歴史を引きずって自虐的に未来を悲観する人たちも少なくありません。過去の大事な歴史遺産をつないでいくのか、負の遺産に引きずられていくのか、今、日本人は大きな岐路に立たされています。
 科学技術の進歩により、快適な暮らしを得て、物質的な幸福感に浸っている私たちは、現実の恐怖を感知する能力が欠如しているとしか思えません。日本人の精神性は日本仏教が支えてきたことは確かです。難しい教義などではなく、日本の伝統的な行事や慣習を粛々と行うことで育んできたのです。しかし、生活様式の変化や伝統文化の軽視や宗教離れの加速がいよいよ問題になってきました。
 最近の悲惨な事件などの要因のひとつには、現代人がこの大切な日本人の魂をつなげなくなったことにもあると思うのです。
 文藝春秋8月号の記事によると日本で最も古い企業は、大阪の金剛組という社寺建築の会社で、何と、飛鳥時代から1400年以上続いているそうです。また、世界最古の宿としてギネスに認定されている慶雲館も飛鳥時代からで1300年以上の歴史があるそうです。しかも、この宿は山梨県の総本山身延山の奥、七面山の更に山奥の鄙びた西山温泉にあり、なぜそんな山奥の宿が続いているのか不思議ですが、それは、山岳仏教の修験者や信徒たちの修行の場所だったからに違いありません。最古の会社も宿も宗教に関係が深かったからこそ永い歴史をつないでくることができたのでしょう。この仏教が日本に定着し、先師たちによって進化しながらつないでこられた証なのです。この歴史と宗教こそが現代の日本人の生き方を形成してきたのです。
 しかし、日本の伝統や歴史を曲解し、独り相撲のように反日を叫ぶ隣国は正しく負の遺産を引きずっているとしか思えません。何事も引きずっていては前に進めません。過去を引きずって生きるより、つないで、つないで新しい時代へと踏み出した方がいいに決まっています。ところが、そうは問屋が卸さないところが悲しいかな我々凡夫であります。
 渋面でいやいや「ひきずる」より、世界共通の笑顔で「つなぐ」ことを心がけながら信仰の秋を迎えようではありませんか。(論説委員・岩永泰賢)

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