オピニオン

2017年8月1日

核兵器禁止条約と被爆国日本

 今春、国連本部での「核兵器禁止条約」の交渉会議で、日本政府の代表は「核兵器保有国の理解や関与が得られない」と、交渉への不参加を宣言し、これまでの「核保有国と非核保有国の橋渡し役」という立場を放棄した。被爆地広島出身でもある岸田文雄外相は、昨年10月には「積極的に参加し、主張していきたい」と訴えていたにも関わらず、一転して「核兵器国と非核兵器国の対立をいっそう深めるという意味で逆効果にもなりかねない」と交渉への不参加を表明した。その後、7月の「核兵器禁止条約」の交渉会議では、120ヵ国以上が参加し、ついに採択へと至った。しかしそこには核兵器を保有する米国、英国、ロシア、フランス、中国、そして米国の「核の傘」に入る日本などの姿はなかった。
 日本政府としては「現実の安全保障問題の解決に結びつくとは思えない」と表明し、5核保有国などと歩調を合わせる道が妥当と判断したのである。
 しかしこのような日本の姿勢に対して、被爆者や多くの国民から落胆や憤りの声が出ている。
これまで日本政府や多くの政治家は「世界で唯一の戦争被爆国として…」ということばを繰り返し述べ「核兵器廃絶に向けて世界をリードしていく」という決意を示していたはずである。ところがこれでは「被爆国としての責任放棄」という声が上がってもやむを得ない。
 核兵器は世界の平和のための「必要悪」などではなく、人類にとっての「絶対悪」であり、またそれは道徳に反するものであり、法律にも反するものであるという被爆者のことばは重い。
核兵器の非人道性は言うまでもないが、それが一旦使用されれば、地球規模で重大な環境破壊を引き起こし、人類の生存を脅かし、将来世代の命までを危険にさらすことをあらためて自覚しなければならない。
 今回、条約の前文に「核兵器使用の犠牲者の苦難を心に留める」として、「Hibakusha(ヒバクシャ)」のことばが入ったことはせめてもの救いであった。
 これについて広島市の松井一実市長は「被爆者を『サバイバー(生存者)』とせず、『ヒバクシャ』と記述した点は、被爆者として生き延びた人という英訳以上の、書ききれない意味をこの一語に込めてもらった」と述べている。
 しかし、今後核保有国がこの条約に加盟する見込みは立っていない。核兵器廃絶ということは、今日の世界情勢から考えれば一朝一夕で成し遂げられるものではないことは容易に想像でき、日本政府の立場も一面的には理解もできる。しかし、この道が「橋渡し役」を担う「唯一の被爆国」としての最善の選択であったのか大いに疑問が残る。今後の日本政府の方向性をしっかりと見守りたい。
 日蓮宗では、これまでも原水爆・核兵器廃絶を訴え続けてきた。また今年三月の日蓮宗定期宗会において小林順光宗務総長は「戦争を知らない世代には、その悲惨さを伝え続け、核兵器廃絶を目指し、いかなる戦争にも反対し、世界立正平和活動を続けていく」と述べている。
 昭和34年、千鳥ヶ淵戦没者墓苑(東京都)が建立されて以来、日蓮宗では毎年八月十五日に戦没者追善供養と世界立正平和祈願法要を営んでいるが、筆者も毎年参列し、その度に不戦の誓いを我が身に刻んでいる。
「世界唯一の被爆国」ということばは、単なる枕ことばであってはならない。その背後から聞こえる「ヒバクシャ」の悲痛な叫びをしっかりと受け止め、核なき世界の実現へと歩みを進めていかねばならない。
(論説委員・渡部公容)

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今年の1月13日の御年頭会の日も晴天にめぐまれました。

日蓮聖人の新年初の月命日はいつも晴れます。

みなさま今年もお元気でがんばっていきましょう!

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