オピニオン

2016年5月1日

それでいいのかニッポン?!

匿名ではあるが、乳幼児の母親から「保育園落ちた日本死ね」で始まるネット投稿をメディアが取り上げて話題になった。安倍首相は、「匿名では実態がわからない」と国会で答弁をしたことからさらに母親たちの感情に火が付き、国会前で「保育園落ちたの私だ」というプラカードを掲げて抗議している様子がメディアで大きく取り上げられていた。
原文を一部抜粋してみる。(以下)「何なんだよ日本。一億総活躍社会じゃねーのかよ。昨日見事に保育園落ちたわ。どうすんだよ私活躍出来ねーじゃねーか。子供を産んで子育てして、社会に出て働いて税金納めてやるって言ってるのに、日本は何が不満なんだ? 何が少子化だよクソ。子供産んだはいいけど、希望通りに保育園に預けるのほぼ無理だからって言ってて子供産むやつなんかいねーよ」とこの先も保育園に入れなかった怒りは、上品とは言えない言葉で感情的な文章となって続く。
私は、この文章を読み、多くの乳幼児に関わる者として思いを巡らした。現代日本の様々な実態が伺える文章だからである。1つには、待機児童数の増加に伴い、母親の不安と苛立ちが真摯に読み取れる。これは、待機児童数が、平成27年4月に全国で約2万3千人であったが、当時、発表では同年10月には約4万5千人になるであろうとされている(厚生労働省)ことが反映している。仕事に復帰しようとしている母親たちにとっては、驚愕の数が示されたのであるから、何としてでも子どもを預かってもらえる保育園を探そうと必死になるであろう。
待機児童の特徴は、首都圏に集中していること。又、0歳から2歳までで約92%、その内0歳に限っては43%を占めている。これも、短い産休問題だけでなく、母親が子どもの月齢が早ければ早いほど確実に預けられるという確約を欲して低月齢化へと促されていく。介護高齢者施設が抱える福祉施設の問題と同様、保育園、保育士不足へと繋がっていくのだ。
国は、待機児童解消策として保育士、保育環境の条件を緩和しようと働き出している。さらに、メディアでは著名な教育者と称する方々が雄弁にこれを推奨するコメントをしている。それでいいのか日本?
保育現場は、過酷な状況に悲鳴を挙げ、保育の質の低下と危機管理に警笛を鳴らしている。つい先日も大阪、東京で起こってしまった乳児の死亡事故の背景には、これが指摘される。
次に、子育てしている母親とその子の関係に幸せという空気が伝わってこない。元来、子を授かり生み育てる中で、ほんわかした空気が母子の間に流れていたはずである。
今、宗門は日蓮聖人ご降誕800年に向けて様々な取り組みを進めている。それを象徴するポスターには、こちらに向かって合掌する人々の姿が映されている。人々が、誕生仏やご本尊に合掌することは多く目にしてきたが、これを見ながら思うのである。まるで仏さまのような穏やかな顔でこちらに向かって笑う幼子を眺めながら「生まれてきてくれてありがとう」という合掌の気持ちを持つことができれば、保護者は、主体である子どもの気持ちを優先する慈悲の心を取戻すのではないか。そして日本社会は、これから毎年保育士待遇、保育園増設のための1兆円予算を計上するなどの、浅はかな施策を転換し、家庭を再構築すべく父親、母親を家庭に還そうという目覚めに導かれるのではないか。
日本に菩薩心の目覚めを祈る。
(論説委員・早﨑淳晃)

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