オピニオン

2016年3月20日

「合掌」の理解を深め、「合掌」を弘める

キック直前で祈るように手を合わせる。土俵上で両手を広げ上体をのけ反らせる。大舞台でスポーツ選手達が見せる様々なポーズ。「五郎丸ポーズ」「琴バウワー」と命名されたルーティンと呼ばれる動作が話題を集めている。「ルーティン」とは「決まった一連の動作」を意味する言葉。その歴史は東京五輪(1964年)でのスポーツ科学研究委員会の心理部会に始まる。ルーティンは選手の不安や緊張をなくし安定した技量やパフォーマンスを発揮するための動作で、一つひとつの動作にその人のみに通じる意味と目的が内在する。それゆえルーティンは時間をかけ反復してこそ会得できる。五郎丸歩選手は一連の動作を完成するまで3年半費やした。その他メジャーリーガーのイチロー選手、体操の内村航平選手、フィギアスケートの羽生結弦選手などもルーティンを取り入れている。
今年の大相撲初場所で日本人力士として10年ぶりに優勝した大関琴奨菊にルーティンを指導したのは、東海大学スポーツ心理学教授の高妻容一教授だ。初場所1月20日の横綱白鵬戦でのこと。琴奨菊は全勝同士の取り組みで見事勝利した。この一戦で印象的だったのは、土俵上の琴バウワーではなく、土俵に上がる前、琴奨菊が花道で祈るように両手を合わせた合掌の姿だった。
そもそも両手を合わせ合掌することは、聖なるものと合一する心を表すもの。法華経には敬いの心で合掌する「合掌以敬心」など随所に合掌することが説かれている。古来、仏を礼拝し恭敬尊重の心を表すのに合掌が最も相応しいとされてきた。
今、日本社会は大地震や原発事故による生活の不安、凶悪事件増加による隣人への不安、少子高齢化による未来への不安など様々な不安感が充満している。このような社会の不安に対し、日蓮宗では「敬いの心で安穏な社会づくり、人づくり」を目標に「立正安国・お題目結縁運動」を展開している。
その具体的スローガンが「いのちに合掌」である。森羅万象を尊び、すべてのいのちに感謝を捧げることにより安穏な社会づくり、人づくりを目指す運動である。本尊に対して合掌すれば信心となり、先祖に対して合掌すれば報恩となり、自然環境に対して合掌すれば感謝となり、人に対して合掌すれば尊敬となり、自分に対して合掌すれば自覚となる。殊に日蓮宗で用いている合掌は十指爪指をぴたり合わせる「堅実心合掌」だ。その基本は合掌と同時にお題目を念唱することにあると思う。発声できない場合は心でお題目を念じる。その上でお題目と無縁の人に合掌すれば、その人にお題目の種を蒔くことになる。これを「下種結縁」と言い、お題目信仰者の大事な修行となっている。宮沢賢治が手本とした常不軽菩薩は、老若男女すべての人に合掌礼拝を実践した。この一途の合掌礼拝を「但行礼拝」と言い、「いのちに合掌」運動の精神的軌範となっている。
日本から世界へ、現代から未来へ向けて安穏な社会づくり、ひとづくりを目指す「立正安国・お題目結縁運動」は10年目の節目の年を迎えた。ルーティンには個別の条件や時間が必要だが、「いのちに合掌」はお題目の精神をバックボーンとした何時でも・何処でも・誰でもできる平和運動だ。「今・ここで・あなた自身」が合掌を実践することが日蓮聖人への報恩となる。
(論説委員・奥田正叡)

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