オピニオン

2015年6月10日

いのちに合掌とお接待

門前、参道、境内に、「いのちに合掌」の幟がはためいている。日蓮宗新聞社から購入し、10基ほどを一年中掲出しているものだ。もちろん、「いのちに合掌」は、立正安国・お題目結縁運動のスローガンであるから、幟の掲出は運動の一環なのであるが、こちらの意図としては、道行く人、境内に入ってこられる方に「生きとし生けるものすべてに慈しみの心を持ち、すべての人を大切に思っています」というメッセージを発しているつもりである。
そんな中、5月1日から7日まで、恒例の七福神巡りのご開帳を行った。この七福神巡りは、10年ほど前から、地元の1社6寺で始めたもので、毎年、正月、5月、9月の1日から7日までご開帳している。動機としては、さびれる一方である地方の「町おこし」への一助として、そして何よりも、希薄になりつつある信仰心の涵養を目的としている。そのために、宗教、宗派の枠を超え、神社神道1社、真言宗2ヵ寺、曹洞宗2ヵ寺、時宗1ヵ寺、そして日蓮宗1ヵ寺で話がまとまったのである。
当山は、健康長寿の寿老尊(寿老人)をお祀りしている。例年、この5月のご開帳は大型連休と重なるから、さぞやお参りの人も多かろうと思われる向きもあるかもしれないが、実のところ、年に3回のご開帳の中で、最も参拝者が少ないのが5月のご開帳である。なにしろ、世間では家族連れを対象にした楽しそうなイベントが目白押しで、初夏の陽気の観光地が待っているのであるから、寺社の巡拝にはなかなか足が向かないのも仕方がないところだ。
ところが今年は例年になく、初日から参拝者が多かった。天候に恵まれたこともあろうが、「いのちに合掌」の「すべての人を大切に思っている」というメッセージが伝わったのかもしれないと密かに思っている。
当山では、七福神巡りでお出でになった方を大切に思っていることを、お接待という形で表すことにしている。正月は、手作りの黒豆、きんとん、水ようかんなど、5月と9月は、手作りのドーナツ、他にも梅干しなどとともにお茶をお出しする。参拝者は、お参りを済ませると朱印をいただき、お接待の席に入る。皆さん、実に楽しそうにお召し上がりになっている。これも、一分でも一秒でも長く境内にとどまって、気持ちよくお参りをしてもらいたいという願いからのお接待である。
5月は花の季節である。残念ながら、当方は境内も狭いうえに、なかなかこの季節に合わせて花を咲かせることも難しい。わずかにボタンやツツジが数株と、鉢植えの草花が咲いているにすぎないが、それでもお参りの皆さんは、花を愛で、本堂前で記念写真を撮り、「ごちそうさまでした」と、にこやかに帰って行く。こちらも「お気をつけて」と声を掛ける。
かつて、宗門で寺院活性化のためのコンペが実施されたが、そのときの一般の方々の応募作品には、寺を花や緑で彩り、人々が集う憩いの空間にするというようなものが多かったように思う。
このようなささやかな社会との関わりが「いのちに合掌」のスローガンに沿ったものであると信じたい。「敬いの心で安穏な社会づくり人づくり」のための宗門運動である。
もちろん、これらのお接待は、住職ではなく、すべて寺族ら関係者の力によることを申し添えておく。
七福神のご開帳は終わったが、今日も「いのちに合掌」の幟がはためき、人々に私たちの思いを伝えてくれている。
(論説委員・中井本秀)

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