オピニオン

2015年4月1日

平和と安穏を願う法華経の教え

イスラム過激派組織の人の命の重さをまったく顧みず、暴力と残虐性をもって自らの一方的な要求を通そうとする蛮行は、いかなる理由があろうともまったく容認することはできない。
世界中にネットで画像を公開し、人々に恐怖心を植え付け支配しようとする過激派組織だが、それが宗教の名の下に行われていることに多くの人びとは疑問を感じ、違和感を持つのである。
また、この度の痛ましい事件に日本人が巻き込まれたことにより、私たちはこれまであまり知らなかったイスラム教、そしてイスラムの歴史や文化に関心を持つことになったのも事実であろう。
あらためて考えてみると、世界各地での民族紛争や国家間の侵略戦争は、はるか昔から絶えることなく続いている。戦後70年間、幸いにして戦火を交えることのなかった私たちにとって、対岸の火事であったものが、今我が身にその火の粉が降りかかってきたのである。
この過激派の言う「十字軍」とは、11世紀末から13世紀に及ぶキリスト教によるイスラム討伐の歴史的事実を指すが、また一方のイスラム教も、戦いを通して布教と侵略を進めてきたその歴史において差異はないといえるだろう。
しかし私たちの仏教というのは、二千五百年という長い歴史の中で、武力を行使して布教を展開したこともなければ、宗教的大義をかざして他国の領土を侵略したり、虐殺を繰り返したことは一度もなかったのである。
歴史を振り返ると、この仏教がインドで繁栄したのは紀元前3世紀から紀元後3世紀頃である。その後インドの仏教はヒンドゥー教の隆盛によって衰退していったが、もう一つの衰退の要因はイスラム教の侵略であった。それは今日でも多く残存する破壊された仏教遺跡の姿を見れば明らかであろう。その後、長い時を経て今日の仏教があるが、この宗教と戦争という歴史を振り返った時、仏教の根本には、たとえ異なる意見があるにせよ、それを一方的に否定し排斥するのではなく、大きく包み込んでしまう包容力、寛容性があることに気付くのである。
もちろん暴力と恐怖を武器として改宗を迫る組織などは、とても宗教とは呼べるものはなく論外であるが、私たちは今ここであらためて、世界にはイスラム教をはじめとして、さまざまな宗教が存在する事実を考えてみなければならない。
現在の日本では、多様な宗教が存在し信教の自由が保障されているが、私たちは幸いにして仏教の広まった国に生を受け、なかでも「諸経の王」ともいわれる法華経を依拠の経典とする日蓮宗に仏縁を結んでいるのである。この法華経というのは、人々の苦悩を救うために釈尊が説かれた経典であるが、聖徳太子のあの有名な「和を以って貴しと為す」のことばの基には、太子の法華経信仰が流れていることはよく知られている。また法華経はこの世界を安穏で平和な仏国土にしていく教えであり、それは日蓮聖人の「立正安国」ということばに集約されている。
今、世界では宗教者会議が盛んに展開されている。日本においても各仏教宗派間のみならず、教義、信条を異にする宗教間においても対話や交流が活発に行われる時代である。
このような時代であるからこそ、私たちは多様な宗教の考えを知ることで、私たちの法華経を基とした日蓮聖人の教えが、いかに世界の人びとの安穏で平和な社会を願うものであるか再認識できるのではないだろうか。
繰り返しお題目をお唱えして、世界の平和と安穏を祈りたい。

(論説委員・渡部公容)

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