オピニオン

2014年10月1日

急増するストーカーへの対応

平成25年中に全国の警察が認知したストーカー事件数は初めて2万件を超え、過去最多となった。本年上半期も、前年を上回る件数で、増加傾向に歯止めがかからない。
平成11年、まだ「ストーカー」という言葉も一般的ではない時代であったが、若い女性が理不尽執拗に交際を強要され、何度も警察に相談したにもかかわらず、民事不介入を盾に保護を受けることができず、遂に白昼スーパーマーケットの入り口近くで殺害されるという事件があった。この「桶川ストーカー事件」をきっかけに、初めて通称「ストーカー規制法」が制定されたのであるが、その後も、接客業従業員に常連客が一方的に恋愛感情を抱き、殺人に至った「新橋ストーカー殺人事件」(平成21年8月)、交際相手本人ではなく、その母と祖母が殺害された「長崎ストーカー殺人事件」(平成23年12月)、メールで執拗にストーカー行為を繰り返し、探偵に依頼して住所を調べ出し、遂に殺害して自ら自殺した「逗子ストーカー殺人事件」(平成24年11月)、タレントの女子高生が、不本意な画像をインターネットに流出されただけではなく、自宅に待ち伏せしていた交際相手に刺殺された「三鷹ストーカー殺人事件」(平成25年10月)等々、社会を震撼させる凶悪ストーカー事件が後を絶たない。
「ストーカー規制法」では、①つきまとい・待ち伏せ・押し掛け、②監視していると告げる行為、③面会・交際の要求、④乱暴な言動、⑤無言電話、連続した電話・ファクシミリ・メール、⑥汚物などの送付、⑦名誉を傷つける、⑧性的羞恥心の侵害、等によって身体の安全、住居などの平穏もしくは名誉が害され、または行動の自由が制限されることになるかもしれないという不安を覚えさせることがあった場合、警察で相談を受け、法律にもとづいて、必要な援助や相手方に対する警告、告訴を受けての捜査・検挙等の措置をとることになっている。
このように、被害者の保護と心のケアについては、法律が順次整備され対策が講じられるようになってきているのであるが、問題は加害者の心の救済である。加害者の心へのアプローチがなされないと、同様のことが繰り返され、エスカレートすることにもなりかねない。
「三鷹ストーカー殺人事件」後に警察庁に設置された有識者検討会は、「治療やカウンセリングで内面に働きかけることは、警告や検挙でもストーカー行為を止められない加害者への有効な対策になる可能性がある」と指摘し、関係省庁、医療機関が連携し、更生プログラムを実施することを求めている。
加害者の心は、修羅の心に占有されている。自らの心が修羅の心に惑わされていることに気づき、そこから一歩抜け出すための光明が見えた時に、加害者の心のケアが始まる。「修羅の成仏」(宮沢賢治)である。
それでは、加害者が自らそのことに気付くように導くためにはどうすればよいのか。警察や司法の力によって強く覚醒を促す道と、自分の心を見つめなおし内省を促す手法と、両面からの取り組みが求められる。前者については、法律の整備等によってある程度の進展がみられるが、後者についてはようやく端緒が見え始めた段階である。
心の在り方の修正に関する問題なのだから、正法に基づく対応でなければならない。宗門としても等閑視していてはならない。ビハーラ活動、仏教的視点からのカウンセリング、社会教化活動等による、精力的な取り組みが求められている。(論説委員・柴田寛彦)

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