ひとくち説法
2015年5月20日号
志を心得て
「凡夫は志ざしと申す文字を心へて仏になり候なり」(『事理供養御書』)
私たち凡夫が仏さまになるには高い志を持つことが大事だ、と日蓮聖人は言っておられます。他人、地域、社会、そして世界のために何か役に立てることはないか? こうした高い志を持つことが、人が仏になっていくためには重要な要素です。
日蓮聖人は「立正安国」=いのちの教え・法華経をみんなが承知して平和で安らかな世界を構築していこう、との志(課題)を生涯持ち続けられました。その崇高な志を大きな力として、大難4ヵ度、小難その数を知れずという苦難多きご一生をたくましく生き切られたのです。その日蓮聖人の教えとその実践は7百数十年後の今日にも及び、地球環境問題をはじめとして核、民族紛争などいろいろな課題が山積している現代、益々その重要性と有効性が認識されているようです。
(千葉県南部布教師会長・野坂法行)
2015年5月10日号
遷化とは
本年2月、3月と続けて大変お世話になった先輩僧が他界した。僧侶が亡くなることを遷化(せんげ)という。
僧侶は亡くなると、仏さまのもとへは向かわず、教化する場を遷すことからこう言われるのだ。亡くなった本体は来世に遷る。しかしそれだけではないのでは、と思った。教化の場が遷るとは、来世はもちろん現世にも通じるはずだ。
現世にあっては「信仰・精神の継承」を意味していると考える。先師の築いた「信仰」は、後に続く者たちへ遷されなくてはいけないのだろう。
さらに私は檀信徒の皆さまとの何気ない会話から発せられる「言葉の持つ魂」に生きるエネルギーを頂いている。これは「精神の継承」であろう。
本年戦後70年の節目を迎える。世では改憲・集団的自衛権が議論されている。読者の先輩方には会話を楽しみ、若き者たちへ自らの経験を遷し、「言葉の魂」で平和への精神を授けて下さることを願う。
(千葉県西部布教師会長・髙鍋隆盛)
2015年5月1日号
生かし、生かされ
現代は、物的には本当に豊かで便利になりました。物や情報も溢れんばかり、消化不良で溺れそう。反面、受け止める間もなく流れ去り、大量消費でゴミの山。手元にある物もいつしかホコリだらけ。十分に活用しない、できないままに…。
日々、万物が因と縁のかかわりの中で刻々と時をきざみ事象が推移して行きます。「活用」とは、存在価値を認識して生かすことです。一頃、外国人が「もったいない」という言葉をピックアップしました。日本人のもつすばらしい精神です。
森と同時に1本1本の木、先行きと同時に現在の足下、周囲の人々・世界との関わりを端座して見つめることが肝要でありましょう。周囲の事象や人間相互の意義を再認識し、生(活)かし、生(活)かされていく総和の世界を―これこそ立正安国。その心眼を開くのはお題目です。
(千葉県東部布教師会長・加藤紳生)