オピニオン
2023年4月1日
いのちに合掌
「認知症にはなりたくない」といっていた私の母だったが、レビー小体型認知症になり、介護を受けた。亡くなる前日、「遅くまでお疲れさま。お先に失礼します」と私に別れを告げ眠ったまま旅立っていった。
中島京子著『長いお別れ』という小説は、アルツハイマー型認知症の父親を10年間介護する家族の絆がテーマの小説だ。認知証のことを「長いお別れ」というのは、老いた親が少しずつ記憶をなくして、ゆっくりお別れするからだ。記憶は失っても家族愛、絆は失われないと教えてくれる。
人間いつかはこの世にお別れする日が来る。仏さまの子として両親の許に生まれ、いただいた〝いのち〟で、家族や社会のなかで修行してより良い世界を築きながら生きて、最後は仏さまの許に帰っていく。自分のいのちも、人さまのいのちも、生きとし生けるもののいのちも、全てその役目がある。だから互いに合掌し合うのだ。
(全国布教師会連合会長・鈴木浄元)