オピニオン
2018年9月1日
食によって生あり
比叡山の居士林で研修した時のことです。食事の時間が来て30人ほどが食べ始めると和尚が出てきて「音をたてるな」と怒られました。音をたてると餓鬼界に落ち食べることができない亡者が音を聞いてさらに苦しむとのこと。なるほどと思いながら食べ終わると、また和尚が出て来て行儀が悪かった女性に「あなたは何歳になられますか」と尋ねました。女性が「25歳になります」と答えると和尚が「人間は飲まず食わずにいたら、たった10日しか生きられません。あなたは25年も生きてこられた。ということは、その間毎日食事をいただくことができたお陰ですよね」。女性が「そういうことです」と。すると和尚が「食事をいただくとは、命をいただくということ。もう少し行儀よく真剣にいただきなさい」と一喝。普段気が付かないことに気付くきっかけとなり、日蓮聖人曰く「人は食によって生あり」とは、まさにこのことだと思いました。
(鳥取県布教師会長・都泰雄)