オピニオン
2016年8月1日
回向する責任
“歯ぐきより 血の出で髪の 抜けにつつ
原爆症の われ生きつぎぬ”
終戦70周年の昨年5月13日、この歌の作者である島根の大先輩が遷化した。世寿92歳。師は20歳の時、見習士官として赴任していた広島で、爆心地より1㌔の所にあった兵舎で被爆した。
「私の生命はご本仏のご加護と大勢の方々の生命を頂いてお陰さまで生かされている」との想いで
「私にはお題目弘通の使命がある、戦争犠牲者の ご回向をする責任がある」と信心され、戦後70年をまさに獅子の如く生き抜いた。
“僧籍に 七十余年 在りし夫(つま)
法号獅子行院の 如く生きたり” 奥さまの歌にも師の生き様がよく表れている。
お題目弘通の使命と戦争犠牲者のご回向をする責任という師の遺志を、戦後生まれの私たちがしっかりと受け継いでいきたいものだ。
(島根県布教師会長・蔵本知宏)
