オピニオン
2016年7月10日
事の一念三千
4月16・17日、熊本地方は大きな地震に見まわれた。東日本大震災の記憶がまだ新しい中、再び大きな震災に遭遇した。被災寺院、被災された方々には、お見舞いの申し上げようもない。
私は、熊本被災のニュースを見聞きしながら、『開目抄』の一節を思い出した。「つたなき者のならひは約束せし事をまことの時はわするるなるべし」の一文である。
人間の世の中では、色々な教訓があり、常識がある。人々は、平素それを口に出し、理解しているつもりになっている。いざという時、果たしてどれだけ分かり切っていることを実行することができるであろうか。
火急の事態に置かれた時にこそ、本当のやさしさ・慈悲は育っていくのかもしれない。宗祖の説かれた「事の一念三千」とは、仏心に基づく行いのことである。
(広島県布教師会長・難波典基)