オピニオン
2015年6月10日
ただただ祈るだけ
先日、もともと生家が当山の檀家で、私が幼い頃には忙しい母の代わりに子守をしてくれた女性が、68歳という若さで霊山浄土に旅立ちました。結婚後もご主人と子どもを連れて境内の掃除をするなど、お寺を気にかけていただきました。
その方の通夜の読経中「恩山の一塵に報じ、徳海の一滴に謝し奉る」という願文が頭をよぎりました。「山のように受けた御恩に対し、チリ一つ分だけ恩返しをし、海のように受けた御徳に対し、一滴分だけ御礼させていただく」という謙譲の意味を含んだ報恩のことばですが、生前いただいた恩返しのつもりでお題目を唱え、ただただ祈るだけでした。
生きていくなかでお釈迦さま、日蓮聖人をはじめ多くの方々からさまざまな御恩や御徳をいただいて、私たちの今があります。私たちができる唯一にして最も大切な恩返しが、お題目を唱えることなのです。
(埼玉県布教師会長・齋藤純孝)