オピニオン
2015年4月10日
心の財を残す
毎日寺にお参りに来ていた檀信徒が亡くなり、その法事の時に、お嫁さんから「母の手帳に書いてありました」と見せていただきました。それを子どもたちに色紙に書いて、渡してあげました。「苦難は味方、貧しければこそ、甘やかされず育った、余裕がなかったからこそ、早くから働くことを覚えた、境遇に恵まれなかったからこそ、強い勇気と忍耐を養った、苦しめばこそ、人の親切と有り難さを知った、悩めばこそ、人の愛情の尊さを知った、だから貧しいことにも恵みがあり、苦しいことにも幸がある」。
お墓参りに来た方たちにも写してあげました。「あの方らしい」と感激していました。彼女なりのエンディングノートではないでしょうか。
日蓮聖人は『崇峻天皇御書』の中で「蔵の財よりも身の財すぐれたり、身の財より心の財第一なり」と述べられておりますが、良い財を子どもたちに残されたのではないでしょうか。
(神奈川2部布教師会長・金子智研)