オピニオン
2014年9月20日
常懐悲感 心遂醒悟
「四年前は家に帰るとお母さんが『おかえり』と大きな声で迎えてくれた。今は『ただいま』と言っても誰もいない。ぼくはさみしい。この悲しみをどこにぶつければいいのかわからない。
でも、ぼくにはお父さんがいる。悲しい時も怒っている時もお父さんがいる。お父さんと一緒に歩いて行くしかない。」これは、東日本大震災で、祖父母と母と弟の4人を一度に亡くし、今は父子2人で仮設住宅に暮らす千葉雄貴君の作文である。
法華経の寿量品のなかに「常懐悲感 心遂醒悟」常に悲しみをいだき続けて心は遂に醒めて悟りにいたるとある。雄貴君も、やり場のない悲しみや怒りを抱き続けることで、生きて行く道を見つけ出している。この逆境に負けない生きる力は、出来事を否定的に捉えるのではなく、受け入れて共に生きることで得たものと思う。全てを肯定する法華経の開会の思想がここに見えてくる。
(熊本県布教師会長・山口義人)