オピニオン
2012年12月10日
いのちに合掌
数年前までは大変元気でカクシャクとされていた檀家のM氏が、体調を崩されすっかり弱くなってしまった。
しばらくぶりでお寺にお参りされた時、会うなり伸びきらぬ指を合わせ合掌し「ご住職、よろしくお願いします」と、言って頭を下げられた。思わずこちらも手を合わせ「こちらこそ」と挨拶したのだが、背も曲がり少し小柄になったその姿が、なぜかとても美しく見えた。年輪を重ねた老人の合掌の姿がとても尊く感じられた。
日蓮宗では「いのちに合掌」を唱え、生きとし生けるものに全てに仏性があり尊い存在であることを説いている。日蓮聖人は『観心本尊抄』で、法華経に「開仏知見」とあり、私達にはすでに仏性が備わっているから、お釈迦さまはそれを開くために世に出現されたのだと、述べられている。M氏が尊く美しく見えたのは、彼の仏性が開かれたからに他ならないと確信した。
青森県布教師会長 三浦 泰昭