ひとくち説法
2023年1月20日号
何のために生まれたのか
「何のために生まれたのか。そして人は必ず死にます」。
自分以外の誰かの役に立つために、自分以外の誰かを幸せにするために、自分以外の誰かを慰めるために生まれてきたんだよ、とお祖父ちゃんお祖母ちゃんお父さんお母さんが、子どもたちに教えてあげてほしい。そうすれば若い命を自分で絶つようなことがなくなるのではと思う。苦しい、辛いだけでは生きていても生き甲斐がない。どんなものでもいいから自分に喜びを見つけてほしい。それも内緒のほうがワクワクして生きることが楽しくなる。人生は楽しくないとつまらない。皆さんは笑っているけどやがて死を迎える。1人残らず。爽快じゃないか。どうせ死ぬんだから、生きている間は全力を尽くして楽しく行こう。暗雲が立ち込めていても、パッと晴れることがある。どん底まで落ちた物事は必ず弾みで上がる。これが仏教でいう「無常」。ワクワクを見つけていこう。
(広島県布教師会長・大平貫脩)
2023年1月1日号
もうこりた
「うさぎ美味し かの山」だと思っていました。唱歌「故郷」の歌い出しの部分です。「かの山の兎」はどんなにおいしいのだろうと子ども心に想像を巡らしましたが、実は「兎追ひし 彼の山」でした。大いなる勘違いです。
先日もあるお坊さんが「私の座右の銘は、『もう懲りた』です」とおっしゃるので、「どんな失敗を重ねてこられたのだろう。よほど悲惨な人生を送られたのだな。気の毒なことだ」と心中大いに同情したのですが、これも勘違いでした。
「忘己利他」と書いて、「もうこりた」と読み、「己を忘れて他を利する」というまさに菩薩行を意味する言葉でした。同情の言葉を口に出さなくて良かったとホッと胸をなで下ろしました。
思えば日蓮聖人のご生涯もまた「忘己利他」の精神を貫かれ、衆生救済のため自ら苦難の道を歩まれたご一生でありました。今年は皆さまと一緒に「忘己利他」に努めて参りましょう。
(岡山県布教師会長・藤田玄祐)