オピニオン
2021年9月10日
生き切る
生老病死、諸行無常。何となく分かっているつもり。でも我が身とは縁が薄いと考えている…、いや考えもせずに日常を過ごしているのが私たち。法華経の中に「更賜寿命」とあります。さらに寿命をいただいたと。かつて師匠と枝垂れ柳の苗を植樹しました。翌年、枝の半分が枯れてしまいました。枯れた部分を切ろうとした時、「切ってはだめだよ。切ってしまえば枝が起き上がり、子どもが通った時に目に当たる。枯れていても用があるんだよ。新芽が伸びたら切ればいい」と教わりました。これが「無用の用」。私たちも現役を終えたら用なしではなく、老いてまだ世の中に役に立つ生きがいを見つけましょう。日蓮聖人は「人の寿命は無常なり。出る気(息)は入る気を待つ事なし。風の前の露、なお譬にあらず。かしこきもはかなきも、老いたるも若きも、定め無き習いなり」と仰います。臨終までの人生をお題目とともに生かし切って歩んでまいりましょう。
(千葉県南部布教師会長・蓑輪顕寿)