ひとくち説法
2020年5月20日号
子育ては仏育て
新型コロナウィルスによる自粛が続き、寺院の境内で周りの新興住宅地に住む見知らぬ子どもが遊び場がないのか遊ぶ姿をよく見かけます。なかには庭石によじ登ったりして危険と思える行為をする子もいたりしますが、昔のおじさんのように怒鳴るわけにもいかず、優しく危険だと伝えます。
自分の子が可愛いのは当たり前ですが、その愛情を他人の子にも向けることは大切なこと。お経の中に「今此の三界は皆是れ我が有なり その中の衆生は悉く我が子なり」と出てきますが、お釈迦さまは「この世の中は私の救う世界で生きる者すべてが私の愛しい子」とおっしゃられています。世界のすべての人々が明るく正しく生きていくことを願っておられます。だから子どもたちを見守り、優しく諭すこともお釈迦さまのお手伝いをさせていただく菩薩行なのです。苦労があっても子育ては楽しいもの。私たち1人ひとりが仏の子である思って生きたいものです。
(大阪府三島布教師会長・萬田信力)
2020年5月10日号
我慢を捨てて
今の社会において、芸能人や有名人が不祥事を起こすと、批判や非難が殺到して収拾が付かなくなることがよくあります。
一般の人びとが自由に発言、発信できることは大切です。しかし、安易に他人を傷つけるだけの批判は慎まなければなりません。
我慢という言葉は、我慢強いなどと良い意味で使われますが、本来は仏教用語で、「自分をえらく思い、他人を軽んずること、うぬぼれ」という意味があります。
日蓮聖人は「仏にならんと思わば、慢のはたほこをたおし、怒りの杖を捨てて、ひとえに一乗に帰すべし」(『持妙法華問答抄』)と、おごりや怒りを捨てて、慎むことが仏の道への第一歩であると説かれています。
私たち日蓮宗は、安穏な社会づくりを目指しています。安穏な社会には、1人ひとりがおごり、怒りの気持ちから離れることが第一歩です。
(大阪府和泉布教師会長・足立英修)
2020年5月1日号
治療
新型コロナウイルスの猛威が止まらない。その発生源は未だ不明だが、過去に類を見ないほどの感染力に人びとの不安は募り、世界的な経済の停滞まで引き起こしている。
感染の拡大を防ぐために、警戒心と対処は大いに必要である。ただし恐れや不安までが蔓延し、貪欲な心が根を張らないようつつしみたい。欲と欲との対立が怒りを生み、現状のような疫病さえもたらすと仏教は説くからだ。
そもそも自らの心と行動から目をそらし、他者や環境を悪とする考え方は仏教にはない。この世を遠ざけ他所に安楽を求めることは、お釈迦さまの本意とは真逆の思想だ。他者は自らの鏡であり、国土・環境は人の心の反映と心得るべきだろう。
経済とは、物やサービスの提供と消費を意味するが、その語源は経世済民(世をおさめ民を救うこと)にある。人と環境との間に調和をもたらす治療こそお題目の信行であると再認識すべきだ。
(大阪市布教師会長・有本智成)