オピニオン
2020年5月1日
治療
新型コロナウイルスの猛威が止まらない。その発生源は未だ不明だが、過去に類を見ないほどの感染力に人びとの不安は募り、世界的な経済の停滞まで引き起こしている。
感染の拡大を防ぐために、警戒心と対処は大いに必要である。ただし恐れや不安までが蔓延し、貪欲な心が根を張らないようつつしみたい。欲と欲との対立が怒りを生み、現状のような疫病さえもたらすと仏教は説くからだ。
そもそも自らの心と行動から目をそらし、他者や環境を悪とする考え方は仏教にはない。この世を遠ざけ他所に安楽を求めることは、お釈迦さまの本意とは真逆の思想だ。他者は自らの鏡であり、国土・環境は人の心の反映と心得るべきだろう。
経済とは、物やサービスの提供と消費を意味するが、その語源は経世済民(世をおさめ民を救うこと)にある。人と環境との間に調和をもたらす治療こそお題目の信行であると再認識すべきだ。
(大阪市布教師会長・有本智成)