ひとくち説法
2019年2月20日号
奉仕の浄行を達せしめたまえ
「奉仕の浄行を達せしめたまえ」とは、私たちがお寺やお家で食事の前にお唱えする日蓮宗の「食法」の最後の一節です。私たちは多くの動物や植物の命をいただき、多くの人びとや物や環境の恩恵を受けて、日々の命を保っております。水・食べ物・服や建物、今のような冬であれば暖房がなければ、私たちは生きることができません。
しかしそれらもすべて、誰かが作り・運び、設備を整えたりしてくれるから、私たちのもとに届き、口にしたり、使うことができているはずです。その諸々のことにかかわる多くの人に感謝して日々を過ごすことが大切です。お釈迦さまは「知恩報恩」、「恩を知って、恩に報いなさい」と教えてくださいます。多くの恩に気付き、多くの人に喜んでもらえる、「ありがとう」と言ってもらえる行いをする日々を過ごすことが「奉仕の浄行」「菩薩行」の実践となるのです。
(北海道東部布教師会長・久富慈順)
2019年2月10日号
天人常充満
ごめんなさい。病気をなおしてあげられなくて
ごめんなさい。ひと声かけられなくて
ごめんなさい。なにもできなくて
30数年間も大黒さまを拝んで、一生懸命信仰してきたSさん。1年前、3月の頃です。
1本の電話が鳴り、肺がんで余命幾ばくもないと知り病院へ。私に最後のお願いがあると。死ぬ前に大黒さまをお納めいただきたいとのことだ。
ベッドに上半身起き上がり、背中に枕をあてて私を待っていた。鼻には酸素吸入のチューブ。左胸の上にもあり、顔も体も痩せ衰えていて驚いた。小さな声で目には涙が溢れ、「お上人さま、ありがとうございました」と御礼を言われました。私はSさんの手を両手でギューッと握りしめ、南無妙法蓮華経とお題目を唱えて最後のお別れをしてきました。ふっと振り向くと、大きな窓の外は白い粉雪が舞っていました。私には天人が白い花で待っているかのように見えました。(青森県布教師会長・藤本胤尚)
2019年2月1日号
遥かなる宙
弥勒菩薩は修行中、竜華樹の下で仏になり、天や人たちのために3回の説法をすると言われている。しかし、それは56億7千万年後のことである。遥か彼方の遠い修行である。そして40億年後には地球のある天の川銀河は、アンドロメダ銀河と激突すると言われている。散り果てた星々は、激しく燃え塵となる。その塵が、合体しながら新たな星が生まれる。生命体が宿るのに数億年以上はかかる。その時に救いの法を説いて下さるのが弥勒菩薩ではないだろうか。弥勒菩薩は282億人の僧侶に対して法を説かれ導くと言われている。でも人類には宿題がある。「末の世になると人間に生まれる者は爪に入る土のように少なく、三悪道に落ちる者は十方世界の塵のように多い。心ある人びとは、よく考えるべきである」と日蓮聖人は言われている。まさに生命体は生きることが修行であり、精進を忘れず励むことが肝要である。宇宙にも、南無妙法蓮華経の広大な大慈悲がある。(秋田県布教師会長・木名瀬了昭)