オピニオン
2018年8月1日
彼此愛憎の心
本年6月に、北朝鮮とアメリカとの会談が行われた。朝鮮半島の非核化が会談の本題だというが、どうだろう……。相方ともにお互いの足元を見ながら、自らの利益を最優先させる姿勢が見え隠れする。そこには、心からお互いを尊敬し、平和を愛するということがあるのだろうか。
「法華経第五薬草喩品」の一節に、「我、一切を観ることをあまねく平等にして、彼此愛憎の心あることなし」とある。しかし、この世の中は、「彼此愛憎の心」に満ちているではないか。
自らを愛するあまりに他を憎み、自らの利益のために他者を犠牲にする。自分自身をすべてにおいて無き者と考えられぬところに、人間の愛情の限界を感じる。人間としての性(さが)である。
「若しは信、若しは謗、ともに仏道を成ず」と、「開経偈」にあるが、仏陀の慈悲は、法を謗る逆縁をも包む大慈大悲なのである。
「法華経の心」はそこにある。
(広島県布教師会長・難波典基)