オピニオン
2014年7月1日
合 掌 礼
もう20年も前のことですが、今でも鮮明にそのときの情景が目に浮かびます。
岩手県のあるお寺に、お説教に呼ばれました。その帰り、ご住職も東京へ所用があり出掛けられるとのこと。花巻駅までお檀家の若い方の運転で、山を越えて送って頂いたときの出来事です。花巻駅に到着して私はお礼を言って車を降り、駅の方へ進みましたが、ご住職がおいでにならない。振り返ってみるとご住職はベレー帽を小脇に挟み、合掌して若い方を見送っておいでになる。
慌てて傍まで戻ると、小さな声でお題目をお唱えになって、車が見えなくなると深く頭を下げられたのです。まったく自然でなんとも神々しいお姿でした。
私は感激しました。涙が溢れそうでした。どんな教えより有り難く、心の奥に響く教えでした。私は人の良いところはまず真似ること、と思っているので、それ以来素直に実行しています。
(島根県布教師会長・吉田亮善)