書評
2014年4月17日
『命燃ゆ』
養珠院お万の方は篤い法華経信者として知られている人物で、徳川家康の側室として徳川御三家の紀伊と水戸の2藩の藩祖を生んだ。そこまではよく知られているが、どこで生まれどのような経緯をたどり家康の側室になったかを知る人は少ないのではないだろうか。
『命燃ゆ』は養珠院お万の方を主人公にした歴史小説で、この本を読めばお万の方の生涯がたどれる。もちろん小説であるから、作者の想像による創作部分もあるが、大筋は史実に基づいていると考えていいだろう。生い立ちから信仰の原点、家康との出会い、家康の法華観なども描かれていて興味深く読める。また作中お万の方は各地の本山寺院をはじめとする多数の日蓮宗寺院を参拝している。当時の寺院や町の様子もいきいきと描かれていて、歴史好きの人にはお勧めの小説。この一冊でお万の方がどのような人物であったかを把握できるはず。平易な文章で描かれており、肩肘張らず読める。読んで損のない一冊だ。
(幻冬舎ルネッサンス発行 定価1500円+税)
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