書評
2014年4月1日
『事典 日本の仏教』
『事典 日本の仏教』(蓑輪顕量編)が発刊された。
従来、事典は歴史的な観点か仏教学的観点のどちらかの分類に焦点をあてて解説されたものが多いが、本書はそのどちらをも網羅する。たとえばある人物を中心にすれば、その人物が生きた時代を浮き上がらせるが、それは個別のつなぎ合わせの歴史を描くことになる恐れがある。
「もっと時代に連動した仏教のもった教理的な特徴やその展開を浮かび上がらせられないか」との思いから、思い切って人物に項目を立てることは避け、各時代の特徴と考えられる事象を示す用語を選び出し、解説を加えている。
インド、中国を経て渡来した仏教は日本で独自の文化的背景に影響を受け、新たに展開した。仏教を読み解くのに必要な歴史的な解説のみでなく、教理や思想の内面にまで踏み込んだ、読み物としての事典。また、執筆者には若き研究者の意欲的な見解も示してあり、好著である。(吉川弘文館発行 本体4200円+税)
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