鬼面仏心

2023年11月1日号

■未熟な人類

いやあ、やっぱり良かった! …〝何が良かったの?〟だって? それは池上本門寺のお会式のこと。総門から大堂までの境内のみでの昨年の練行列が、今年は池上の夜を万灯が照らし、多くの人たちが講中に負けじと、熱い視線を向けていたからだ▼講中も参拝者もはたまた夜店目当ての者も異体同心にみんなお会式を楽しんでいた。まさしくこれがこの世の浄土だと感じた▼そんな余韻のなか法定速度50㌖の幹線道路で車を運転していると、自転車が並走していた。時速は47㌖を示しているのに、その自転車はペダルを漕がずともゆうゆうと進んでいた。ナンバープレートもなければ、ヘルメットもしていない。それが47㌖だ。別の日、同じような自転車が繁華街の狭い路地を猛スピードで走り抜けていった。しかもスマホを片手で操作しながら▼最近、パリでの電動キックボードのレンタルが禁止になった。死亡事故が発生したり、運転マナーの問題を受けたためだ。残念ながら、世の中の人たちは大小あるが未熟だ。もっというと人類自体も未熟だ。もちろん小生もそのなかに入る▼だからこそ個人、組織、国家それぞれが安穏な家庭・社会・世界へ導く努力と平和や共生共栄のメッセージを発信し啓蒙していかなければならない。日蓮宗にはそのメッセージの基となるお題目の教えがある。目指すはあの「お会式」の世界だ。

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2023年10月10日号

■97歳からの手紙

帰省した子どもや孫と一緒に嬉しそうにお参りするお婆ちゃん。小さな手を合わせる子どもたち。久しぶりのお盆らしいお盆を感じてから早2ヵ月。猛暑はやみ今は涼風が立つ▼世間ではお葬式・お墓・お寺などをいらないとする「3離れ」が進んでいるという。確かにそういう人も多くなったが、今年のお盆を見る限り、そんな人ばかりではないと心を強くした▼そんななか、檀徒のNさんが「母から住職さんに」と封書を手渡してきた。Nさんのお母さんは今年97歳になる。封筒の中には折りたたまれた1万円札と「いつもお経をあげていただいてありがとうございます。お礼もうしあげます」と1字1字丁寧に書かれた手紙が入っていた。「これは?」とNさんに尋ねると「住職さんのお陰で仏さまに守って頂いている母のお礼だそうです」とのこと。法事や祈願といった法務へのお礼ではない。自分が元気に生きていられるのは、住職の祈るお経により、仏神が守ってくれるから。その感謝のお礼だという▼「3離れ」といわれる時代。しかし、Nさんのお母さんのような心で私たち坊さんを見てくれる人がいることを、とても嬉しく思った。Nさんのお母さんに仏さまの心を感じた。同時にそんな思いで私たちを見てくれている檀信徒がいることを忘れないために、頂いた手紙を机の前に貼り、心の戒めとしている。   (義)

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2023年10月1日号

■遠く離れても…

葬儀の依頼を受けて駆けつけた家には、54歳で急死したご主人が眠っていた▼枕経の後、涙をこらえて振る舞う息子さんと葬儀の打ち合わせをした。その後、故人の奥さんがお茶とお菓子を出してくれた。故人の故郷・長崎の「おたくさ」というアジサイをかたどった焼き菓子だった。「旧盆に1人暮らしの母を心配して帰郷したときの主人のお土産です」という。故人にとって最後の帰郷であり、最後の家族への土産だと思うとこみ上げてくるものがあった▼翌日この「おたくさ」を元にして通夜説教をした。おたくさは江戸時代の長崎オランダ商館の医師・シーボルトに由来する。一時帰国の際、国禁の日本地図を持ち出そうとして国外追放になった彼は、日本に残した妻「お滝さん」を「おたくさん」と呼んでいた。植物学者でもある彼は、日本から持ち帰ったアジサイに、会えなくなった妻の名から「オタクサ」という学名を付けた。花言葉は「離れても思っている辛抱強い愛」だ▼枕経の時のおたくさを示し、名前の由来と花言葉を告げた。故人を想い出すとき、自分のなかで故人は確かに生きていると感じてほしいと話した。子どもたちには日蓮聖人のご遺文『忘持経事』の言葉を通して、人の身体は父母の血肉を分けたものだと伝えた。たとえ遠く離れて会えなくなってしまっても、人はつながり続ける。(雅)

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新年のご挨拶。

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