ひとくち説法

2023年9月1日号

音の響きとオンブ

1世代前頃までオンブは当たり前の光景だったが、ダッコ型に姿を替えたのはなぜなのか。そんな疑問を呈したら、教育者から応答があった。
「オンブでは心臓の鼓動を通じて一体感が」と。オンブを擁護する根拠と受け止めた。両手が空き安定し、仕事をしつつ子守りができる、ともっぱら利便性で捉えていたが、母胎生活時分の記憶や安心感が呼び覚まされ、心の安定が得られるのか。
そういえば、寺に来る幼児は皆、本堂の大太鼓が大好きだ。命を感じ取る音と響きなのか。
「音と響き(修行と悟り)が同時」とは、法華経ですべての者が成仏する譬えの1つだ。命の慶びと祝福が既に約束されているのだ。オンブはそれをリアルに確認できる場なのかもしれない。
ダッコ型商品主流の現況、その背景やねらい、思想はわからない。が、我が孫は流行に逆らって今日も、オンブ帯を手に「要求」する。あるいは、コミュニケーション手段として有効か。(宮城県布教師会長・梅森寛誠)

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2023年8月20日号

汽笛一声島原を

「汽笛一声新橋を」と長い歌詞の「鉄道唱歌」を明治生まれの祖母はよく唄ってくれました。
上京してJRで新橋から品川方面へ向かうときは、流れる風景に合わせてこの明治の歌を口ずさんでいます。2番には「右は高輪泉岳寺 四十七士の墓どころ 雪は消えても消え残る 名は千載の後までも」。次に「窓より近く品川の 台場も見えて波白く 海のあなたにうすがすむ 山は上総か房州か」と続きます。品川から高輪にかけて江戸開闢の折に加藤清正公は屋敷を構え、池上本門寺の境内・伽藍の整備に尽力しました。江戸の玄関口を押さえた清正公の先見性はさすがです。日蓮聖人にゆかりのある房州や富士山を望めるこの沿線は日蓮宗にとっても大事な場所です。通過のたびにこの歌と歴史に胸を熱くします。
久々に上京したとき、この沿線の大規模な開発と建築ラッシュにはびっくりしました。高輪界隈には延々と大型ビルが建設されているではありませんか。人口減少による社会の縮小が懸念される将来、これだけのコストをかけての事業が必要なのかと疑問に思うのは私だけでしょうか。
地方では過疎が進むばかりです。あまりにも対照的な都市部の開発が不安になります。切り捨てられていく地方の町や村はどうしたらよいのでしょう。そこにあるお寺もどうしたらよいのでしょうか。日蓮聖人の「花は根にかへり、真味は土にとどまる」(『報恩抄』)にあるように、私たちが生まれ育った郷土の大地に根を張ることによって国土全体に花を咲かせることができると思います。聖人の法華経観は国土安穏、立正安国の実現を目指されたことにあるはずです。だからこそ京都に上らず地方の関東で最期まで伝道されたのでしょう。現代のように一部の国土に豪華なあだ花を咲かせても、いつかは全体が枯れ果ててしまうでしょう。正しく『立正安国論』の提言通りです。
さて明るい話題に転じます。先月の7月23日は熊本本妙寺で413回目の「頓写会」が営まれました。清正公の1周忌に朝鮮出身の高麗日遙上人が追善のために法華経一部を書写し納めたことに因み、翌年の3回忌には寺内全ての僧侶が一晩で書き上げ(頓写して)奉納したことから始まりました。
拙寺・長崎県島原市護國寺は高麗遙師の開山でもあり、年間の写経を納めるために檀信徒と参拝を続けています。近年まで夜を徹して賑わっていましたが、年々衰退してきました。加え熊本地震、コロナと夜店もなくなり、お参りも激減し、清正公のご威光もどこへと残念でなりませんでした。しかし、今年は8年ぶりに夜店が並び活気を取り戻したのです。子どもたちが嬉々として走り回り、同伴の大人たちで賑わいました。清正公もさぞお喜びになったことでしょう。歴史と伝統、出店と子どもの威力に改めて感じ入った頓写会でした。
拙寺では江戸時代から島原城で上演されている「薪能」の事務局を引き受け、島原城天守閣前で毎秋開催して、今年で41回になります。プロの能楽師に負けない地元の子どもたちの狂言の声が天守閣にこだまし、その声が魔を払います。頓写会には遙かに及びませんが、荒廃していく地方に残る歴史と文化を根っ子として、将来の花が咲いてくれればと微力を尽くしています。子どもの声を汽笛として「汽笛一声島原を」と明るいリズムで未来に向かいます。今年は10月7日の観世流の「船弁慶」です。幽玄の舞台はどこにも負けません。皆さまもお出かけになりませんか。なぜか入場無料です。   (論説委員・岩永泰賢)

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臨終のこと

当山では2月15日、お釈迦さまの涅槃会の法要を営む時に、涅槃図を掲げて読経をします。涅槃図を見ますと、お釈迦さまを中心に弟子や動物に至るまでさまざまなものたちに見守られながら臨終なさっています。わが宗の日蓮聖人も池上の地で最期を迎えられますが、弟子に見守られながらご遷化されています。
私も僧侶となり30年になります。いろいろと人の生死に関わってきましたが、最近では家族に見守られながら死を迎える人が少なくなっているのではないかと思います。さまざまな事情もあるとは思いますが、親子関係、人の関わり方に変化があると思われます。私自身は多くの人に囲まれ死を迎えたいと心から思っています。生を受けた時から死は必ずやってきます。皆さまは本音でどう思っているでしょうか。信徒は家族や周りの人には迷惑をかけたくないといいますが、「本心でそういっているのだろうか?」と思います。
(福島県布教師会長・大越一優)

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新年のご挨拶。

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    中尾堯著
    日蓮宗新聞社
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  • 日蓮聖人―その生涯と教え―

    日蓮宗新聞社編
    日蓮宗新聞社
    定価 826円+税

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