ひとくち説法
2023年11月1日号
欲心を減らす
今年も11月1日から2月10日までの寒壱百日の日蓮宗加行所(荒行)が始まりました。この荒行は、自由・生命・自我を鬼子母尊神に預けて行う修行であり、自らの「欲」を減らし、多数の修行僧がともに壱百日を乗り越える行です。
法華経28番目の教え「普賢菩薩勧発品」の中に「少欲知足」、少欲にして足ることを知るとあります。
「欲」とは、何もかも欲しいと思う心。大きな「欲」を持たず、今あることに満足をし、日々の生活を送ることが大切なのです。
食欲・財欲・名誉欲など、人は誰でも他人と比較をし、大欲のままに生きたなら、いさかいが起こり、国と国との欲の張り合いなら、戦争が起こり、多くの大切な命を失うことになるのです。
「南無妙法蓮華経」を唱え、大きな「欲」を少しでも減らし、他人のことを思う心を持って、皆ともに生きていきましょう。(青森県布教師会長・工藤裕雅)
2023年10月10日号
38年前の博士
総代さんの納骨法要の時、向かいのお墓に手を合わせる見慣れない人がいた。「千葉から来た」というその人は小学生の頃、2週間この街に滞在。当時お世話になった人にお礼を伝えたくて38年ぶりに秋田に来訪し、恩人のお墓でお参りしているところだった。たった2週間の滞在にも関わらず、長い時間を経て溢れる感謝を垣間見た。
彼は思い出がよみがえってきたようで「そういえば、近所に何でも教えてくれたおじさんがいて、〝博士〟ってあだ名をつけていたなぁ」という。
私は、すぐに納骨したばかりの総代さんのことを思い出した。その場にいたご家族に問うと、教員をしていた総代さんが〝博士〟その人だとわかり、納骨当日に巡り合う不思議に驚いた。
感謝の思いは深く心に刻まれ、ふとした時に湧きあがる。言えなかった「ありがとう」なら、なおのこと。私たちを安穏へと導くお題目をお授けくださった日蓮聖人に「ありがとうございます」。(秋田県布教師会長・山田恵隆)
2023年10月1日号
お金の使い方
今年は33年ぶりという言葉が世の中をにぎわせている。日本の株価がバブル後の高値を更新したという。株価上昇により、資産が拡大し、消費も拡大、結果景気が良くなっていく流れが実現すればと願っている。
法華経には、長者が何度も登場する。さらに名医などまで含めると、財産家は繰り返し登場する。
これは何を意味しているのか。専門的・高度な知識を我々衆生に教え、導いてくれるとの意味もあるが、資産を持つ意味を説いていると捉えたい。
不労所得を嫌い、清貧を美化すべきでない。資産の多寡を競うのではなく、いかに使うか、豊かに智慧を用いるべし、との寓意として長者を登場させているのだ。今回の株高を通じてより多くの人が資産を拡大させてほしいと願うが、同時にその資産を何に使うか、いかに使うかを競ってほしいものだ。バブルの二の舞は避けてほしいのである。
(岩手県布教師会長・木村匡宏)