ひとくち説法
2023年5月20日号
ケーキ屋さん
ケーキ屋さんに入った。ゆったりとした雰囲気の造りで綺麗なお店だった。マスクをした店員さんも優しい。商品棚というのだろうか、透明で大きなケースに近づくと、キラキラ光るケーキが並んでいる。私は特段ケーキ類が好きというわけではない。ケーキ類とはいわないのだったか。スイーツというのだよ、と聞こえてきそうだがそんなことはどうでもいい。不思議なことに、綺麗なケーキのどれがいいかなと、選んでいる瞬間を楽しんでいる私がいたのである。私もマスクをしていたが、おそらく嬉しそうに選んでいたと思う。
ケーキ屋さんも、お客さんが幸せそうに目を輝かせながら、選んでいる姿に接するときが一番嬉しいのだろうか。ケーキ屋さんという空間にはいろんな人の幸せが、浮かんでいるのだろう。
この幸せな空間を、マッチ売りの少女がマッチを擦ったときにだけ現れるような、幻想にしてはいけない。
(福岡県布教師会長・西島良祐)
2023年5月1日号
行動に移す
とあるテレビ番組で長距離自転車通学をしている高校生の様子が放送されていた。動機は「交通費を削減することで親の負担を軽減したいから」とのことだ。高校卒業の日、3年間自転車通学を続けた感想を求められると「楽しいことも辛いことも同じくらいあった。何より〝もっと頑張っておけば良かった〟と思わなかったのは頑張りきることができたからだ」と、実に清々しい笑顔で語っていた。天候や体調など、自転車通学をやめる理由はいろいろあるだろうに、環境のせいにせず、まず行動に移したことでしか得られない経験だ。親への気遣いで始めたことが、結果として逆境にくじけない強い心を育んだ。
「み仏の言葉を聞いて拝んでも我が行いにせずばかいなし」という道歌がある。今をイキイキと生きるための法華経の教えは、置かれている環境のせいにせず、自らが率先して行動に移すことの大切さを説いている。
(高知県布教師会長・渡邊泰雅)