2023年1月1日
持続可能な世界を日蓮宗が作る!!
〝SDGs〟という言葉をよく耳にするが、持続可能な社会を目指すために17項目の目標を立てて、実施を推奨するものである。地球の急激な環境変化を考えると、悪いとはいわないが、とても状況に即した行動になっているようには思えない。現状を例えると、地球という「大船」が沈没しそうになっているのに、まるで甲板掃除を推奨しているような感じにさえ受け取れる。二酸化炭素の排出削減が訴えられるが、温暖化の根本原因はその二酸化炭素の300倍もの温室効果のある必要悪と表現しながらも、元凶は肥料が気化してできる「亜酸化窒素ガス」であると2008年8月28日付の科学雑誌『サイエンス』での科学論文で報じられている。
かつて、「フロンガスがオゾン層破壊の原因である」といわれ、車のエアコンや空調機、冷蔵庫までも代価フロンに代えられたが、オゾン層の破壊の阻止はおろか、温暖化も止まってもいない。『サイエンス』の論文が正しいとするなら、亜酸化窒素ガスを止めなければならない。一般人には、無関係だと思われている「亜酸化窒素ガス」は、肥料によるものである。田畑に散布される化成肥料は、その大半が気化してしまい、亜酸化窒素ガスとなり大気に散乱される。土に残るのは、わずかであり、水に溶け硝酸塩となり、川に流れ、地下水を汚染し、海に流れていく。海水が窒素過多となり赤潮の発生原因となったりしている。最近、群馬県の病院で3人の赤ん坊のミルクに使用した〝水道水〟が大量の硝酸塩に汚染されており、ブルーベビー症候群(メトヘモグロビン血症)を引き起こし、危ういところで一命を取り留めた事件も記憶に新しい。
仏教には、五戒がある。その最初に「不殺生戒」、つまり何も殺してはいけないという大切な戒めがある。では、これを守っている人は何人いるのだろうか? 精進料理を食べているという人もいるだろうが、食している米が農薬散布されている物なら、大量に爬虫類や昆虫を殺してしまっている。地球上にいる生き物には、それぞれ目的があり、悉有仏性と説かれるように、人に食べさせてはいけない食材を創り上げると、虫たちが集まってきてくれて、食べつくしてくれる。人は、自分が間違っているとは考えてはいない、虫が悪いのだと。だから、害虫というカテゴリーを作って、殺虫剤で殺戮するというデカルト二元論のような〝害虫駆除思想〟が生まれてくる。もし、害虫といわれる虫たちが私たちと会話できるなら、きっと「人にとって危険な食物を作らないでください。私たちが代わりに食べますから」と虫たちは語るに違いない。宇宙全体は、調和という作用があり、常にホメオスタシス(恒常性)を維持しようと虫たちが集まって働くのは、バランスを崩した人の成す業である。
私たちの身体が維持され、正しく機能するために必要とされる、体のシステム全体がバランスのとれた状態となっている。体内の酸の濃度、血圧、血糖、エネルギー、ホルモン、酸素、蛋白質、体温の各値が、内外の変化に反応して常に調整され、正常な値が保たれるようになっている。持続可能な世界の理想とするモデルは、この人体に最初から備わっている。虚妄を説くより、もう1度人体を観察し、人以外の存在が常に〝妙法〟の中に生かされていると感じた時に、私たち人類は初めて、持続可能な世界づくりと法華経の深遠なる教えの正しさに気づかされるのかもしれない。世相を見るにつけ「汝、早く信仰の寸心を改めて、速やかに実乗の一善に帰せよ」の聖語が去来する。仏神を敵にしない生き方が持続可能な世界を作れるのだから。 (論説委員・高野誠鮮)