ひとくち説法
2022年12月20日号
人生の指針
かつて、詩人宮沢賢治を熱く語った僧友の本葬儀のため新潟市古町を訪れた。
そこは歌人で書家の會津八一氏(=秋艸道人・1881~1956)の生まれ育った地だった。
氏は門弟のために『学規』(人生の指針)を定めた。
◎ふかくこの生を愛すべし ◎かへりみて己を知るべし ◎学芸を以て性を養ふべし ◎日々新面目あるべし、と。
釈尊もご入滅前の最後の説法で、弟子に向かって指針を示された。
「此の世は絶えず移り行くものである。怠ることなく真摯に励めよ」と。
あまりにも早く変貌する世の中にあっても、私たち信徒は己を見失うことなく、よく知り、学び、日々新たな人間の理想を目指して歩み続けなければならない。
(兵庫県北部布教師会長・吉川陽久)
2022年12月1日号
八入の雨と薫習のお題目
すっかり陽が落ちるのが早くなり、夜の長い季節に入りました。この時期はシトシトと冷たい雨が降りますね。染色のとき染液に1度だけ浸すのを一入、何度も何度も浸して、濃く染め上げることを八入と言います。この時期の雨は、一雨ごとに木々が赤く染まっていく情景を表して八入の雨と表現されます。万葉集にも、「紅の八塩(入)に染めておこせたる 衣の裾も通りて濡れぬ」と歌われています。お経の中にも似たような言葉があります。薫習です。毎日のお香が物や人にその香りを移していつまでも残るように、みずからの行為が心の習慣となって残ることを言います。お題目は何度も唱えると、法華経全ての功徳が全身の心と体に移り、ご先祖や子孫の霊魂に染み渡ります。日蓮聖人は『観心本尊抄』で、「仏既に過去にも滅せず未来にも生ぜず、所化以て同体なり」と仰っておられます。生まれながらの仏性が、薫習のお題目によって真に現れて参りましょう。
(兵庫県西部布教師会長・森勝亮)