ひとくち説法
2022年9月10日号
彼岸を前に
お寺の過去帳を見てふと気が付くことがあります。終戦前に亡くなられた大勢の戦没者の行年の若さです。
それからさらに遡り見ますとたくさんの水子、嬰児嬰女など、生を宿しながら生まれ出ることのできなかった命、また生まれても短命に臨終を迎えた子どもたちの多さです。
それぞれ原因はありますが、その親たちの悲しみは同様に計り知れないものだったでしょう。ただそれらは昔のことと思っていました。それが今、また世界中で目を覆うような悲惨な情景が繰り返されています。
ウクライナでは父親が国を守るために戦い、母親は子どもを連れて避難する、その姿を見ていますと、私たちのご先祖も同等の状況下で今日の私たちに命を繋いで下さった。つくづく命の尊さに感謝の念を持つと共に次に命を繋ぐ責任を自覚いたします。
(大阪豊能布教師会長・渋谷泰雅)
2022年9月1日号
季節の試練に耐え
四季の変化のある日本では、季節の中でそれぞれの趣を感じさせてくれます。春風の心地よさは人情だったり、照りつける夏の日射しは生きるための逞しさを、澄んだ秋空は爽やかさを、冬の寒さは生きる厳しさを教えてくれます。
現在は世界的に異常気象が起こっています。今年は梅雨が早々に終わり、猛暑がやってきました。現在は厳しい残暑の中にあります。あまりに極端な季節の変化は我々の心情にも影響を及ぼし、イライラしたり、人間関係がギスギスしたりとよろしくない感情が増します。
日蓮聖人は50歳の時、極寒の佐渡島へ流罪に遭われて、3度の厳しい季節を過ごされました。その渦中において宗教者の自覚を深められ、後に「法華経を信ずる人は冬のごとし。冬は必ず春となる」と『妙一尼御前御消息』で申されました。私たちもいろいろな季節の試練に耐えて、人として心の真価を発揮したいものです。
(大阪府三島布教師会長・萬田信力)