論説

2022年8月20日号

世界不戦平和条約締結を目ざす時

■戦争の放棄は世界の宝
過年、ある会のパネルディスカッションで、パネラーを務めたことがある。
その時に1人の女性から質問があった。「平和のために戦争をしないことは分かりますが、もし日本が他国から攻めて来られたらどうしますか」と。
私はパネラーの1人として次のように答えた。
「それは誰もが懐いている問題ですね。他国が戦争をしかけてきたら専守防衛しかありません。だから戦争をしないためには、日本だけの問題ではなく、他国も戦争をしてこないようにしなければなりません。ですから戦争の放棄は、日本の宝だけではなくて、世界の宝だというのはこのことだと思います」と。
第2次世界大戦で敗戦し、大変な憂き目を体験した日本は戦争の放棄を宣言した。戦後77年を経過し、世界状況が変化している中で、戦争経験者も減少し、戦争放棄や核兵器廃絶の日本の誓願も忘れがちになっている。
■ロシアのウクライナへの侵攻
ロシアがウクライナへの侵攻を始めて5ヵ月が過ぎた。
ウクライナの国土が廃墟と化していき、多くの人びとの殺戮が続けられていて、いつ終わるともなく混沌としている。
この戦争で、人類社会はいろいろな影響を被り、早く平和が来てほしいと願っているが、不安はつのるばかりだ。
いま人類が遭遇しているこの危機を乗り越えて、世界人類の恒久平和を構築していくためには人類の英知を結集して努力していく以外にない。
第1次世界大戦後の1928年に、戦争を繰り返さないために「世界不戦条約」が締結された。日本もそれに加わり批准している。しかしその後、満州国の建国、上海事変、日中戦争と続き、第2次世界大戦の勃発となった。
この失敗をよくよく分析し、今度こそ人類の永久平和・仏国土顕現を構築していくことだ。
今こそ、人類の平和・核兵器廃絶への王道を目ざしていく時が来ている。
■日本の世界的使命
時あたかも、今年は日蓮聖人佐渡始顕大曼荼羅750年の慶節を迎えた。
地涌の菩薩の上首・上行菩薩のご再誕としての使命を自覚された日蓮聖人が、法華経の絶対平和の世界の顕現を目ざして図顕されたのが大曼荼羅御本尊である。
ロシア・ウクライナ戦争の最中に、この慶節に遭遇したのには、何か天の計らいがあるのかもしれない。
日蓮聖人は法華経の信仰を、南無妙法蓮華経の5字・7字のお題目にされて、日本の仏法と名づけられた。この日本の仏法の南無妙法蓮華経は、私たち1人ひとりの幸せと同時に、世界人類の幸せを願う祈りである。
個人と人類と同時に救われていく信仰が法華経の立正安国・立正世界平和の信仰である。それを目ざして、ご本仏の大慈悲心に生きよと、私たちに生きる大道をお示し下さった。
日蓮聖人の佐渡遠流は、聖人の魂の叫びを認めるためであったと思う。
先の大戦で、350万人の同胞の尊いいのちを犠牲にして日本人が持った悲願は、戦争の放棄と核兵器の廃絶である。
ロシアのウクライナへの侵攻戦争の中で、世界人類が目覚めなければならないのは、やはり戦争の放棄と核廃絶である。
日本の仏法を信ずる私たち日本人の出番は今だ。世界不戦平和条約の締結を目ざして、日本が立ち上がる時が来ている。
(論説委員・功刀貞如)

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2022年8月1日号

日蓮宗の統一理念 布教方針「いのちに合掌」

日蓮宗の布教は法華経と日蓮聖人がお説きになったお題目の教えにより、人びとに安心を与え、平和な社会を築くことにあります。基本的には日蓮宗宗務院での伝道企画会議で策定される『布教方針』で展開されます。
布教方針は、独立性をもつ寺院・教会・結社の布教活動に統一感を持たせる布教理念です。会議では昨年度まで行われていた宗門運動「立正安国・お題目結縁運動」の総括、次年度布教方針について討議されました。全国の管区伝道企画会議から、「いのちに合掌というスローガン自体が僧侶や檀信徒にある程度浸透し、一定の評価が得られている」という意見が多数報告されました。具体的には「いのちに合掌を永遠のテーマに」・「いのちに合掌を継続すべき」・「いのちに合掌は分かりやすく宗門の方向性が明示されている」などでした。協議の結果、次年度布教方針として「いのちに合掌」を継続していくことが決定しました。
布教方針策定部会において、原案が作成され、内局会議、再度の宗務院伝道企画会議を経てパンフレット『布教方針 いのちに合掌』が完成しました。
『布教方針 いのちに合掌』の第1の特徴は、長期的布教方針となったことです。「一隅を照らす、これ則ち国宝なり」(天台宗)は半世紀以上提唱されてます。また「世のなか安穏なれ、仏法ひろまれ」(浄土真宗本願寺派)、「明日に礼拝、夕べに感謝」(真宗大谷派他)も長期間提唱されてきました。布教方針が継続性を持つことで認知度が高まり、「いのちに合掌といえば日蓮宗」が社会に浸透していくことを期待します。第2の特徴は、布教方針と宗門運動が切り離されたことです。これは宗制(日蓮宗の決まりごと)第14号『布教規程』第3条「本宗の布教は、年度の方針に準拠し、時に臨み機に応じてこれを行い、宗門運動を推進する」が「本宗の布教は、布教方針に基づき、時に臨み機に応じて行う」に改正されたことに起因します(令和3年4月1日施行)。第3の特徴は、「いのちに合掌と但行礼拝との関連が大事」の意見から、日蓮聖人のご直筆(『日妙聖人御書』)による不軽菩薩の24字を紹介し、その筆意から「いのちに合掌」のバックボーン・不軽菩薩の但行礼拝を連想してもらう試みがなされています。
『布教方針 いのちに合掌』には、最初に布教方針策定の経緯、続いて「いのち」について・道筋の提示・私たちの布教・ほかの道筋の説明をし、布教方針の基本的な考え方を伝えます。パンフレットを観音開きにすると大曼荼羅世界に到達する5本の道筋、①一切衆生悉有仏性、②但行礼拝、③不軽菩薩の振る舞い、④お題目の下種・結縁、⑤ほかの道筋の解説及び、「道筋提示」の図が掲載されています。いのちに合掌の湖で育った「蓮」に導かれる5本の道筋。どの道筋で登山しても、「日輪」輝く大曼荼羅世界に到達することを目標とします。これは日蓮聖人に近づくための理念的理解です。そして、5本の道筋を①言説、②修法、③法要儀式、④社会教化、⑤さまざまな布教と入れ替え(順不同)、また、①教区、②管区、③寺院・教会・結社、④四会(全布連・全修連・全声連・全社連)、⑤各種団体(全日青・女性教師の会など)と替えることで(順不同)、現場での実践的布教方法を考えてもらう内容です。
今回の布教方針は、長期展望に立って全体を示したもので、今後は必要に応じて詳細なテキストや、檀信徒用、未信徒用、青少年用の資料が配布される計画もあるようです。日蓮宗はこういった道筋からいのちのありがたさ、尊さを伝え、すべての人たちが救われる世界を目指していきます。
(論説委員・奥田正叡)

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