日蓮宗新聞

2022年5月10日号

横浜市妙法寺が「地獄」制作?

おまえはどう生きてきたんだ? VR用いて生き方問う

地獄VR編集部宛に電話が鳴る。相手は開口一番こう言った。
「地獄に堕ちませんか?」。
もちろん堕ちたくないが、何か悪いことをしたかと最近の行いを走馬灯のように一瞬で振り返っている自分がいた。電話口の相手は横浜市妙法寺住職の久住謙昭師。『エイジング・ノート』や仏教マンガの制作などさまざまな活動をする久住師のことだから、また何か企て(制作し)たことは間違いない。「行きまーす! …いや、堕ちまーす!」と地獄に堕とされるにしては軽いノリで堕ちに行くことにした。
今回、久住師が理事長を務める社団法人・みんなの仏教が映像制作会社・百人組の協力で作り出したのは「地獄VR」。簡単に言えばバーチャル・リアリティの技術を使い、ヘッドセットを装着することによってあたかも自分が地獄にいるかのような体験ができるというものだ。その第1回となる体験会が4月23日にあるということで妙法寺まででかけてきた。
妙法寺に到着すると三角巾と装束をまとった女性が受け付けてくれた。これから死後の旅に出るのかと思うと緊張するどころか、ほっこりとする。だって彼女が温かく迎えてくれるんだもの。しかし本堂ですでに待っていた参加者は緊張の面持ちで、地獄に堕ちるのを待っていた。
開始時刻となり、久住師が地獄への案内人として登場した。地獄は八大地獄という8つの種類の地獄があることを紹介する。その鬼たちから受ける責め苦のむごたらしいことといったら…。地獄のやつらの性格の悪さに舌を巻くが、人間の本性がそこにあるような気もした。そしていよいよ地獄への旅(?)へ。三角巾がつけられた(細かな演出がにくい)VR用のゴーグルを装着し、(死後の)旅が始まった。映像は暗い世界を映し出す。暗闇の向こうには不気味な灯りがみえる。360度見渡せるVRなので思わず顔をいろいろな方向に向け、キョロキョロしてしまう。「向こうに見える青い炎は何なんだろう?」などと考えていると、「ああぼくは今、舟に乗って向こう岸に行くんだな。そうか、これは三途の川なんだ」とVRに没入している自分に気づく。岸の向こうにたどり着くと見上げるほど大きな閻魔大王を前にして足がすくむ。そして閻魔がこう聞く。
「お前はどう生きてきたんだ?」。
地獄のほか、修羅界、畜生界、餓鬼界(映像は決しておどろおどろしくないのだが、やはり没入感のゆえにリアリティがある)を旅した後にVRが終わると久住師が再び地獄とは何かを話し始める。最後にわかりやすい「法華懺法」、つまり「自分の罪・行いを省みて懺悔する」法要が営まれた。

この地獄VRを発案した久住師は「参考にしたのは『涅槃図』を見ながらその世界を説明する絵解き。同じように言葉、空間、芸術を通して教えや世界観を伝えてきたのが仏教。仏教の歴史は伝道の歴史でもあります。今回のVRもその延長で、技術は新しいですが、形が変わっただけで特別なことではありません」と語る。制作を担当したみんなの仏教・プロデューサーの安田ひとみさんは「エンタメ要素はあくまで入口。出口にはちゃんと気づきが生まれるようにしたかった。浮かれていないか、ずれていないかは、ものを作る上で常に意識しています」と話す。たしかに映像中の「むさぼり」の演出なども繊細にこだわり抜いて表現されているが、セリフには現代の私たちにその意味をきちんと落とし込み、生き方を問うてくる内容だ。またVRだけではなく、法話・法要が一連の流れに組み込まれることにより、学びや気付きの時間となっている。それは仏教の本来の姿でもある。
参加者の1人は「映像として体感し、また住職の話を聞くことによって文字を読むだけで知る世界とは全く別のアプローチですんなりと理解ができました。リアルな体験は自分の普段の生活を見つめ直す機会になりました」と話してくれた。
妙法寺の玄関を出るとき、「私はどう生きるのか」と問う自分がいた。「どう生きてきたか」という問いに臆することなく「私はこう生きてきた」と言えるように。もっともVRで地獄を体験し、素直に「あんな暗い地獄の世界に2度と堕ちたくない」とも思ったことはいうまでもない。
今後、6月12日、7月24日に体験会がある。詳細はhttp://jigoku-vr.comまで。また全国にVRの貸出も行う予定。問い合わせは妙法寺(☎045・811・0256)まで。

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