日蓮宗新聞

2022年4月1日号

東日本大震災から11年。生きている限り供養

震災11年③東日本大震災から11年を迎えた3月11日、被災地各所で慰霊法要などが行われた。岩手県釜石市仙寿院の芝﨑惠應住職は釜石仏教会として同市での身元不明者の遺骨9柱を安置する大平墓地公園内の納骨堂で法華経とお題目を唱え、参列した野田武則市長らとともに供養の誠を捧げた。式後、芝﨑師は参列者に「震災行事が各市町村で減ってきているそうです。震災の教訓を伝えていかなければまた津波で多くの命を失うことになるでしょう。慰霊の行事は教訓を伝えていく1つの方法です。必ず行事を続けていかなければなりません」と教訓の伝承が薄れていることを危惧した。
続いて仙寿院で慰霊法要が遺族や檀信徒の参列のもと営まれ、犠牲檀信徒や救助活動にあたって命を落とした市の職員らへの回向が行われた。兄夫婦をなくした菊地敏雄さん(71)は「当事者にとってはまだまだ傷は癒えない。でも津波はまたくる可能性がある。備えはいつも万全にしておいた方が良い」と話した。また夫・三浦秀夫さんを亡くした妻の早月さん(58)は息子の脩汰さん(32)と参列した。墓碑を見て秀夫さんの享年に追いついたことに気づいたという早月さんは、「11年間、辛いこともいっぱいありました。だから夫に応援していてくださいと墓前でお願いしました」と話した。脩汰さんは「当時大学生でした。今は社会人になり子どももいますが、父に報告できる親になっているのかな、あのときの自分より成長できているのかなといつも考えてしまいます。でも父にできなかった恩返しを母に返していきたいと思っています」と語った。
芝﨑師は式後、参列者に向かい「皆さまの経験が教訓として伝わっていくならば、多くの命を救うでしょう」と述べ、改めて教訓を伝える大切さを訴えた。
檀信徒164人の犠牲者が出た大槌町蓮乗寺でも慰霊法要が行われた。木藤養顕住職は犠牲檀信徒の1人ひとりの名前を丁寧に読み上げて供養した。また震災発生時刻の14時46分のサイレンが被災地に鳴り響くなか、檀信徒とともに境内で冷たい風を浴びながら、海に向かいお題目を何遍も唱えた。木藤師は「あのときの光景は11年経っても消えることはありません。3月11日のこの日に限らず、亡くなった人のことを思い出して供養してあげてください。10年で震災行事をやめたという話も聞きます。でも生きてるうちは思いは消えません。だから私は生きている限りこの法要を続けていきます」と参列者に誓った。
震災11年②同日夕方。仙寿院が市仏教会を代表して釜石市での犠牲者の名前が刻まれる慰霊追悼施設「釜石祈りのパーク」に竹灯籠を並べ、火を灯した。日が暮れるにつれ、灯籠で作られた言葉「忘れない」がパーク内に浮かび上がり、犠牲者名を包んだ。芝﨑師は「犠牲者を忘れないということと同時に教訓を忘れない」と思いを込めたことを話した。


釜石市仙寿院では震災での思いを誰にも吐露できない人たちのためにせめて文章で気持ちを打ち明けてもらおうと昨年から「想いを伝える短い手紙」の募集を始め、3月11日に第1集を発行した。そのなかの1つには「家族みんなが俺をおいていった。俺も皆と一緒に死にたかったよ。津波は憎い、憎い、憎い。けど俺まで死んだら、誰が家族みんなを思い出してくれるんだろう。だから俺はまだ死なない。みんなが安らかになるまで俺が弔うよ。いつかみんなで笑いあおうな。それまで俺が頑張るから…。(76歳・男性)」と記されている。

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