オピニオン

2021年5月10日

日蓮宗信行道場

 日蓮宗信行道場は、日蓮宗第29代管長(身延山第83世)望月日顕法主(1865~1943)により昭和12年(1937)に開設された。混乱した社会状況の中、当時日蓮宗では将来に向けた僧道修行のあり方が課題となっていた。望月管長は、「日蓮宗僧侶の根本修行道場を祖山身延山に」の信念から信行道場の開設を決意。大講堂の寄進を函館市實行寺檀家・筆頭総代梅津福次郎氏(1858~1942)に依頼した。梅津氏の出身地・茨城県常陸太田市の郷土資料館梅津会館に大講堂の設計図と関係資料が保管されている。望月管長の手紙には「宗門にても宗立として身延山信行道場を設立いたし…日蓮宗第二世の僧侶の修養道場御寄進にあずかりたく…」と記され、さらに「…渡函の際、御願申上置き信行道場一基建立御快諾聴取り存じ候‥」と承諾の旨が記されている。大講堂建立を伝える貴重な資料だ。信行道場では毎年梅津氏の追善供養を行っている。
 信行道場は、かつて西谷檀林善学院があった場所に建つ。善学院日境上人(身延山14世)は、弘治2年(1556)身延山西谷に隠栖し庵室善学院を結び三大部を講じた。西谷檀林(身延檀林)の始まりである。後に心性院日遠上人(身延山第22世)により檀林の体制が整えられた。
檀林とは、学室ともいい仏教各宗派が僧侶の教育機関として設けた学問所のこと。年間200日が開講され、今でいう中学生から大学院生まで約13年間だった。修学課程により履物や扇など持物が区別され、入檀1年目は手の甲を足のかかとや膝に付けて歩く。2年目は胸に付けて歩くなど歩行所作も決められていた。学僧は谷(学寮)で寄宿し、指南頭から三宝給仕はもちろん、上下礼節・礼儀作法の指導を受け、障子開閉・草抜掃除、一挙手一投足の立居振舞まで社会の模範となるよう教育された。自坊に残る『鷹峰檀林山門永則』「二枚舌で和合僧を破る事永々追放」等の制掟がその厳しさを伝える。
 日蓮宗信行道場で35日間の結界修行を積むことにより初めて日蓮宗の教師(僧侶)として認可される。講義や法要実習はもちろん、僧侶としての品格、実践的知識の習得を目指す。数年前に訓育主任を勤めた時の事である。1人は70歳を超えた女性道場生。夜中に押し入れをゴソゴソ。講義中はウトウトと報告があった。「辛いですか。帰りますか」と尋ねると、「大丈夫です。死んでも帰りません」と返答。もう1人は外国人女性。正座で足を痛め歩くのも辛い。日常会話も難しく、ローマ字で法華経を読誦していた。心配して面接すると「日蓮宗のお坊さんになるために来ました。頑張ります。」と語る。2人の堅い決意が印象的だった。
50年ぶりの改修工事で北寮や教師寮が新築、大講堂も耐震設備が施された。医務室や身障者、外国人用の居室が整備され充実した修行環境が整えられた。昨年度は全て中止されたが、今年度は4期の開設予定、すでに第1期信行道場が始まっている。暁天の水行から始まり、朝勤、講義、法要修礼、書写行、夕勤、夜勤の唱題行まで厳しい日課が続く。
 「給仕第一・行法第二・学解第三」を道場清規として修行が行われる日蓮宗信行道場。日蓮聖人の御廟所に毎日直参し師巌道尊の精神が養われる。
 コロナ禍での修行は道場生にとっても訓育部にとっても厳しい35日間になるに違いない。修行場の歴史と先師の徳香に護られながら無事修了されることを祈っている。
(論説委員・奥田正叡)

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